事業承継トラブル・チェックシート【現経営者向け】
現在、「後継者不在」や「新型コロナウィルス感染拡大による先行きの不透明」などで、会社や事業の譲渡(M&A)を考えている経営者が増えています。
自社を高く売るためには、「企業価値」を高める必要があります。「売上・利益」「ビジネスモデル」「優秀な人材」などの他に、「法律を順守しているか?」「決められたことがきちんとやれているか?」などのコンプライアンスの実行も企業価値の評価対象になります。
日本弁護士会は、2020年7月に「事業承継トラブル・チェックシート」の改訂を行っています。【現経営者向け】と【後継者向け】に分けてまとめています。今回は【現経営者向け】を紹介します。
M&Aの検討の有無にかかわらず、トラブルを未然に防ぐために、このシートでの現状確認と必要に応じた対応を行って下さい。
これまでの会社運営が要因となった起こるトラブル
Q1 株主が不明確なために起こるトラブル
1 会社の株主が誰なんかを把握している
2 株主名簿に記載されている株主と実際に出資をした者が一致している
Q2 経営がルールに沿っていないために起こるトラブル
3 これまで重要なことは取締役会や株主総会を開いて決めてきた
4 従業員には残業代を全額支払っている
Q3 株式の譲渡や相続に関するルールを決めていないために起こるトラブル
5 定款上、株式譲渡には取締役会での承認が必要とされている
6 定款上、株式を相続した者に売渡しを求めることができる
Q4 会社の財産と個人の財産が区別されていないために起こるトラブル
7 本社・工場の敷地や建物は全て会社名義となっている
8 自分と会社の貸付金や負債は多くなく、内容も貸借対照表に正確に記載されている
相続や贈与が要因となって起こるトラブル
Q5 相続によって株式が分散するために起こるトラブル
1 自分が死んだ場合、誰が株式を相続するか決まっている
2 相続人が複数いる場合、株式は法定相続分に応じた数で当然に分割されないことを知っている
Q6 相続や贈与で財産を集約し過ぎるために起こるトラブル
3 後継者だけに財産を生前贈与すると、どのようなリスクがあるか知っている
4 後継者だけに財産を相続させる遺言には、どのようなリスクがあるか知っている
Q7 遺言の効力を十分理解していないために起こるトラブル
5 公正証書による遺言でも、無効になる場合があることを知っている
6 誰が借金を引き継ぐか決めるには、遺言だけでは不十分であることを知っている
親族以外の第三者に事業承継をするケースでのトラブル
Q8 検討段階での準備が不十分なために起こるトラブル
1 第三者との交渉に当たり、自社の企業秘密などを守る必要があることを知っている
2 交渉相手と同じ仲介業者に依頼すると、どのようなリスクがあるのか知っている
3 契約書作成を業者に丸投げすると、どのようなリスクがあるのか知っている
Q9 契約内容の理解や検討が不十分なために起こるトラブル
4 表面保証責任という言葉の意味を知っている
5 事業承継をしても金融機関が個人保証を抜くとは限らないことを知っている
6 免責条項という言葉の意味を知っている
7 協業避止義務という言葉の意味を知っている
8 事業承継後に従業員や取引先が残るとは限らないことを知っている
Q10 M&A仲介・斡旋業者をめぐるトラブル
9 着手金だけでなく、月額報酬や中間報酬を確認する必要があることを知っている
10 成功報酬の算定方法を確認する必要があることを知っている
11 契約期間中に別の業者に依頼すると、契約違反になる場合があることを知っている
12 業者に依頼した後に業者を通さずに直接交渉すると、契約違反になる場合があることを知っている
相続や贈与に関する税金をめぐるトラブル
Q11 税金のことをよく知っていれば避けられたトラブル
1 毎年110万円の範囲内で株式を贈与しても、課税される場合があることを知っている
2 相続時精算課税制度のことを知っている
3 非上場株式の相続税や贈与税の優遇税制のことを知っている
信託の活用をめぐるトラブル
Q12 信託のことをよく知っていれば避けられたトラブル
1 事業承継に信託を活用できる場合があることを知っている
2 信託を活用しても、遺留分をめぐる争いが起きる場合があることを知っている
3 会社の顧問弁護士を信託の受託者にすると、問題があることを知っている
4 信託を活用すれば、生前に決めた順番で経営を引き継げることを知っている
詳細は、日本弁護士連合会のホームページをご覧下さい。各項目に関して詳しく解説しています。
当社でもご相談を受付けています。
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