事業継続に不安を感じた時に:大きく3つの選択
事業の継続に不安を感じた時の手段は、大きく次の3つです。
(1)経営改善(再生) *立ち直る
(2)廃業・破産 *やめる
(3)事業承継 *ゆずる
今回は、これらの概要を説明します。
不安を感じた際は、一人で悩まず、当事務所にお問い合わせ願います。
まずは、お悩みをじっくりと聞かせて頂きます。
現在の経営の中で、次のようなことはありませんか。
・主力製品(商品)の売上が減少している
・いつも通りに経営しているつもりだが、利益が減ってきている
・売れ残りの在庫が増えている
・銀行から新規の融資を断られた
・売掛金が焦げ付いて回収できなくなり、支払いができなくなった
・税金や社会保険の支払いが遅れている
程度の差はありますが、経営者の方は、何らかの不安を抱えていらっしゃると思います。
また、経営が順調であっても、病気になったり、高齢になったりして、先のことに不安を感じている方は多いと思います。
事業継続の岐路に立たされた場合、大事なことは、現状を正しく認識して、先の光を感じることができるかどうかです。
そのためには、「経営者の意欲と覚悟」が最も重要になります。
会社を、従業員を正しい方向に導けるのは、経営者しかいません。
(1) 経営改善(事業再生)
銀行からの借入金の返済に困ったときなどの先に不安を感じたときのポイントとしては次の3点が挙げられます。
① 経営者に事業を改善(再生)して、事業を継続していく「意欲と覚悟」があるか?
② 今後、営業利益を安定して出していける見通しがあるか?
③ 関係者の理解・協力・支援を得られるか?
これらの基本的なことを頭に入れて、以下に事業改善のステップを説明します。
現状の正確な姿の把握
まず、現在の状況を正確に把握することが重要です。
現状が把握できれば、例え悪い現状であっても、わけがわからなく不安な状態よりも、精神的にも安心感が出てきて、先を考えることができます。
悪ければ落ち込むのではなく、開き直れば良いのです。
現状分析では、主に次の2点を行います。
・資金繰りの状況(向こう半年の予測):どれだけ資金が続くのか?
・3年分の決算書の分析(損益計算書・貸借対照表):どこに問題があるか?
この際の分析として、「セグメント別の業績分析」が有効です。
原因の推定から改善の方向性
上記の原因分析から、原因を推定して改善の方向性を出します。
この段階で気を付けたいのは、原因を深く追及して、気持ちを暗くしないことです。
原因追及の一方で、先の光を見い出せる改善策を前向きに考えることが必要です。
改善策を考えるためには、まずは、自社の強みをきちんと認識することです。
具体的な計画の策定
上記の改善策を決定したらその具体化を計画書に落とし込みます。
この際は面倒でも「業績の数値計画」も行って下さい。
金融機関に返済を一時的に止める場合(リスケジュール)、金融機関にいつからどのように返済できるか、その根拠を示す必要があります。
目安は、「3年以内に経常利益の黒字化」、「5年以内に債務超過の解消」、「債務超過解消後10年以内に借入金の返済終了」です。
定期的な管理体制の確立
社長や経営者が指示をしなくてもきちんと動ける会社が理想ですが、何らかの管理体制が必要なのが現状です。
・財務会計の管理体制
税理士任せ、経理の担当者任せを脱却して、経営者が判断できるデータを早く完成する仕組みを作りましょう。
状況が早く知ることができれば、改善も早くできます。
月次の決算(試算表)と資金繰り実績は、翌月の3営業日までには多少精度が悪くても一旦まとめて、5営業日までには「現状把握と対策会議」を実施できる体制を築きましょう。
・業務の進捗の管理体制
策定した計画をしっかりと実行しつつ、定期的(毎月)に確認を行い適切な計画修正を実施しましょう・
*PDCAサイクルのレベルアップ
・人の面の管理体制
会社が成長・発展するには、そこに働く経営者を含めた全ての従業員の力が必要です。
特に、組織的に展開する場合、各組織のリーダーの役割が重要です。
適切な人事制度(評価制度)の構築を含めて、人の教育を考えていきましょう。
(2) 廃業(清算)・破産
事業改善(再生)をあきらめて会社経営をやめる場合、廃業(清算)手続きと破産手続きのどちらかを選択します。
選択の基準は「負債(借金・銀行の借入)を全て払うことができるかどうか」で決まります。
負債よりもお金に換えられる資産が多い場合(資産超過)で、債権者に全額の返済が可能であれば廃業(清算)を選択します。
一方、資産より負債の方が多い場合(債務超過)で、債権者に全額支払いができない場合は、破産を選択します。
廃業(清算)の手続き
会社法の清算の手続きに沿って処理を進めます(通常2ヶ月以上かかります)。
手続きの中で、確定申告や登記申請が必要になりますので、税理士や司法書士への依頼も必要になります。
また、一連の処理の中で、紛争が生じた場合は、弁護士に依頼する可能性もあります。
当事務所では、廃業(清算)の一連の支援を行うことができ、税理士、司法書士、税理士と連携していますので、一連の処理の中で必要な場合も対応が可能です。
廃業(清算)は、会社の余力があるうちに検討するのも意味があります。
例えば、現在の業績は良いが、現在の事業は今後の変化(経済の環境面、法律の改正、代替技術の出現)によって、衰退かまたは消滅してしまう可能性が高い場合です。
この場合は一旦廃業し、清算で残った資本で、次の有望な事業を立ち上げるのも良い選択(第二創業)かと思います。
破産の手続き
会社の負債が資産よりも多い場合(債務超過)や支払不能により債権者に全額の支払いができない場合は破産を選択せざるを得ません。
破産手続きは、裁判所から選任された破産管財人が、破産者の財産をお金に換えて、債権者に平等に配当することを目的にした制度です。
手続きは破産法に従って進められます。
「破産」は絶対に避けたい方法です。
会社が破産する場合、債権者のみならず、多くの関係者に影響します。
経営の異常に少しでも気づいた場合は、早めに、当事務所にご相談下さい。
(3) 事業承継
事業承継とは、会社の事業を後継者に承継させることをいいます。
中小企業経営者の高齢化が進んでいて、優れた技術やノウハウなどを次世代に伝えるためにも、事業承継は重要なテーマです。
経営者の中には、「自分の目の黒いうちは誰にも経営権は渡さない」という方も多く見られますが、自分の功績を後世に確実に引き渡すことは大事なことです。
自分が「事業を始めたとき」「先代から事業を引き継いだとき」から、その後の事業承継を考えていくくらいの気持ちが必要です。
<事業承継の分類>
事業承継には、大きく次の3つに分類されます。
① 親族内承継
自分の子供や親戚に継がせる場合です。
一般に他の分類と比べて、社内外の関係者の理解も得やすく、事業承継の準備期間を長くとることができるメリットがあります。
しかし、近年は、継がせる子供がいない、いても継がせたくない(子供が継ぎたくない)というケースが増えています。
② 親族外承継(役員・従業員承継)
親族以外の役員・従業員に承継する方法です。
社内で経営の意欲と能力を持つ者を見極めて後継者を選ぶことができ、経営の一貫性を保ちやすいメリットがあります。
ただし、親族内承継の場合とは異なり、有償での譲渡になることが多く、後継者に資金がない場合は問題になってきます。
③ 社外への引継ぎ(M&A)
株式譲渡や事業譲渡といったM&Aの方法により社外に引き継ぐ方法です。
親族や社内に適切な後継者がいない場合の選択肢になります。
「M&Aは大企業対象?」「身売りや乗っ取り?」というイメージがあるかと思いますが、近年は、中小企業の事業を継続させる手法として多く使われはじめています。
広く社外に後継者候補を求めることができ、また従業員の雇用を守り、取引先との関係を継続できるメリットがあります。
M&Aの場合は、「事業を買ってくれる会社がある」ことが前提となるので、自社の事業の価値を高めて、買い手がつくように魅力的なものにしておく必要があります。
また、一部の事業に魅力(収益力が高いなど)があれば、その事業だけを切り離して売ることも可能です。
親族内承継や親族外承継には、後継者教育や株式の移転(経営権の引き渡し)など、時間と労力が必要です。
また、社外への引継ぎ(M&A)には、相手方の選定、いかに有利な売却ができるかの対策など、この場合も時間と労力が必要です。
事業承継の初期の段階では、選択肢を広く持つことが必要です。
例えば、承継として「長男」を予定していて後継者教育を実施していたが、親子間の対立や長男の奥さんの反対などで、結局承継できなかった。
教育に時間がかかっていたので、この時点では自分が高齢化して、次の後継者を決定し育成する気力がなくなってしまった。
この場合は、長男の承継を前提に進めますが、他の「親族外承継」や「社外への引継ぎ(M&A)」も視野にした計画を進めることが必要です。
また、事業承継に関しては、国や自治体は重要なテーマとして選定し、様々な制度を実施していますので、その制度を有効に利用することも今後重要になります。
現在は、年間当たり約15万社、1日当たり約400社が廃業している状況です。
特に最近は、後継者不足、人手不足、環境・事業構造の変化によるビジネスモデルの陳腐化などによる廃業が増えてきています。
廃業を防ぐためには、日頃の管理・仕組み作りが重要になります。
当事務所では、現状分析から始まり、経営改善・経営発展のための戦略作りを経営者の方と一緒に検討していきます。
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