深刻な中小企業の人手不足~打開策を考えましょう~
いろいろな中小企業の経営者の方と接することがありますが、「人手不足」で困っていることは強く感じます。
ただ、嘆いていても仕方がありません。
ピンチをチャンスに変える前向きな考え方・行動が必要です。
「人手不足」の対策は、次の3つの方向です。
(1)既存のメンバーの生産性(能力)を上げる
(2)女性・高齢者・(外国人)の雇用を真剣に考える
(3)離職者を減らす
政府(中小企業庁)も現状を認識し、平成29年3月に「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン」をまとめています。
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170314006/20170314006-7.pdf
中小企業の人手不足の現状
職種・業種別の状況
ほぼ全ての中小企業で人手不足は問題になっていますが、特に次の業種でより深刻になっています。
● 建設業
● サービス業の中で
・介護・看護
・宿泊・飲食店
・運輸業
人材面では
建設業や製造業での現場作業員や小売業の販売員(いわゆるブルーカラー)が不足しているように思えますが、研究・開発などの技術者、マーケティングや経営企画・内部管理など(いわゆるホワイトカラー)の人材も不足しています。
現在、実感は別として、景気が良くなっていると言われて、大企業は新卒の採用を増やしています。
これに伴い、「給料面」「福利厚生面」で劣り、また、「東京一極集中」の面もあり、地方の中小企業の人材確保はますます厳しくなっています。
中小企業の実体(人手不足・事業承継・マーケティングなど)や相続関係の説明で使わさせて頂いているものを次に示します。
日本の人口は、2015年頃をピークに減少に転じています。
それに先立つように、生産年齢人口は、1995年頃から減少しています。
人口減少や少子高齢化ははっきり言って防ぐことはできなく、これを認識して考えなければなりません。
単なる生産年齢人口を増やすには、移民を大幅に増やすことしか手はないと思いますが、今の日本の状況(制度面・管理面・感情面など)では困難と思います。
人手不足の対策はあるのか?
中小企業は、何か手を打たなくては成り立ちません。
政府は景気を浮上させるために(効果は別として)様々な政策を実施しています。
特に中小企業向けには、税金の面、補助金の面、融資の面(返済の面)などで優遇策を打ち出し、また地方銀行には地元企業への貸出しを増やすことを指示しています。
ただし、何もしなければ(行動しなければ)、政府も商工会議所等の支援機関は助けてくれません。
支援してもらうためには、「やる気を持って、計画があり、しっかりと管理できる」会社でなければなりません。
人手不足の対策の3つの方向について示します。
(1)既存のメンバーの生産性(能力)を上げる
先に述べたように、新たに人を集めることは難しいです。
最初に検討すべきは、既存(保有)の人材を「人財」レベルに上げること、組織として、個人としてのレベルを上げることです。
レベルを上げることは「一人の付加価値(利益)」を上げること(労働生産性の向上)です。
方法として、次の3つがありますが、組み合わせによってより効果的になります。
① 省人化のための設備導入
・製造面では、単純作業の自動(ロボット)化、ネック工程のてこ入れによる生産性向上など
・事務面では、最新ソフトの導入・入れ替えによる処理能力向上など
② 作業(業務)の標準化
・標準化を行うことによりムダがなくなり、効率が上がります
・また、多能化(1人がいろいろな作業ができる)の面でも有効で、組織全体の処理能力が向上します
③ 個人のレベルの向上(教育・能力開発)
・単に外部の研修を受けるだけでは意味がありません
・個々の役割を明確にして、会社としての各人の教育プログラムを考えることが重要です
(2)女性・高齢者・(外国人)の雇用を真剣に考える
・大企業の採用は「新卒者」が中心になりますが、中小企業では「中途採用」のウエイトが高くなっています。
・子育て後に復職する女性は、大企業よりも中小企業を選択する傾向があります。
このため、中小企業は女性を受け入れやすくする環境(ハード面:更衣室・トイレ等)の整備や業務の内容、勤務形態の見直しが必要です。
現在、建設現場でも女性の採用が増えつつあります。
女性の採用により、違った視点でのアプローチ、社内の活性化(雰囲気の変化)などにより、業績が向上している企業も見られます。
・高齢者は、まだまだ元気な方が多く、働きたいと思っている方も多いと思います。
「高齢者=経験者」なので、その経験を活かさない手はないと思います。
ただし、高齢者にある一定の給与の中で、いかに能力を発揮してもらい、効果を上げるかは、会社特に経営者の資質の問題になります。
・最近は、「技能実習制度」や「留学生の増加」などにより、外国人を採用する企業が増えています。
ある製造会社では、「日本人の派遣社員」は数日で来なくなるが、「技能実習生」は2~3年間は働いてくれるので戦力として当てになるというお話もお聞きしました。
*技能実習生制度はあくまでも「本国に戻って習得した技能をその国のために使用してもらう」のが主旨ですが、一方では中小企業の人手不足の対策にもなっています。
外国人の就労状況については、当事務所が中心で運営しています次のサイトに記載していますので参考にして下さい。
行政書士4名で「外国人のビザ申請」「帰化申請」の支援を行っています(福岡外国人ビザ申請アシストセンター)。
http://fukuoka-visa-assist.com/news/780/
※ 女性、高齢者、(外国人)の方々を重要な戦力として活用するためには、やはり「経営者の覚悟と行動」にかかっています。
(3) 離職者を減らす
中小企業は、大企業に比べて「離職者が多い」ことも事実です。
「給料面」や「福利厚生面」の要因もありますが、やはり「(人間関係を含めた)職場環境」「人間としての存在価値」「会社の将来に対する不安」などの面が大きいと思います。
給与を多く払うことは難しいですが、個人の価値観によっては「やりがい」に重きを置く方も多いと思います。
大企業よりも、1人当りの利益の面で上を行っている中小企業は多く存在します。
その要因は、企業風土の面が大きいと思います。
従業員が働きやすい設備面の整備も大事ですが、個々のやる気を出させる仕組み(評価制度・目標管理制度)や小集団活動(5S活動、提案制度、QCサークルなど)も有効な方法です。
これらにより、「せっかく育てたのに辞めてしまった」ということがないようにしたいものです。
今回は、中小企業の人手不足の現状認識とその対策について示しました。
先に示しました中小企業庁のガイドラインには、人手不足の対策に対する事例も紹介されていますのでぜひ参考にして下さい。
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170314006/20170314006-7.pdf
個々の会社によって状況は異なります。
先ずは、現状を正しく認識することが重要です。
業績不振の原因が、人手不足と思っていたが、実は違ったということもあります。
当事務所では、「経営革新等支援機関」としての中小企業支援の専門家として、現状把握とその先の対策の実施まで、系統的にご支援させて頂きます。
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