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経営戦略(4 )自社を固める:事業ドメインの設定

北九州アシスト法務事務所は、中小企業支援を主な業務とする行政書士事務所です。

これまで「経営戦略」について、「必要性」と「現状の正しい認識」について紹介してきました。

今号では、「事業ドメイン(事業領域)の設定」について紹介します。

 

経営戦略立案のステップ

北九州アシスト法務事務所が考えている「経営戦略のステップ」について示します。

1.現状を正しく認識する(自社、市場や競合):紹介済み

2.自社の「事業ドメイン(事業領域)」を設定する:今号で紹介

3.上記に基づいて事業戦略を立案する

4.事業戦略に基づいて計画を作成する(目標設定、日程)

 

事業ドメインの設定

事業ドメイン(事業領域)は、事業構成や事業領域を明確にすることです。

①誰に、②何を、③どのように提供するかを明確にすることです。

①誰に(顧客、市場):ターゲットとする顧客(市場)を示します。

事業ドメインの設定の際、最も重要なことが「自社のターゲットは誰か」を明確にすることです。

ターゲットの選定は、業種ごとに異なります。

一般消費者を対象にする「小売業」や「飲食店などのサービス業」では、「年齢×性別」が一般的ですが、その他に、所得層、価値観・考え方、行動様式などが考えられます。

現在及びこれからは、少子高齢化で「高齢者」が増えますが、高齢者の中には「体力的」「精神的」に様々な方がいらっしゃいます。

「高齢者」をいろいろな視点で、さらに分解していき、絞り込むことにより、ターゲットになる「顧客・市場」がより明確になります。

②何を(価値):自社が提供する価値(ベネフィット)を示します。

自社が提供しているものは何か?」「目に見えている製品か?」「それとも何か別のものか?」を突き止めて考えてみる必要があります。

お酒の「卸売業」は、メーカーからビール、日本酒、ワインなどを仕入れて、小売店や飲食店に販売しています。

物としては、「お酒」を販売していますが、卸業としては「商品の売れ筋情報」や「新商品を製造メーカーに代わって説明する機能」「在庫調整機能」を「提供する価値」と考えられます。

「ビールなどの製造メーカー」や反対の「小売店・飲食店」は卸業のこのような機能に価値を見出して、商品を提供したり購入したりしているのです。

卸業の会社がこの機能を果たせなかった場合、製造メーカーは別の卸売りの会社に代える検討をすると思います。

③どのように提供するか:自社が保有する技術・ノウハウを示します。

ターゲットとする顧客・市場を明確にし、提供する価値を明確にしたら、「それをどうやって提供するか?」を考えていきます。

競合との差別化を実現するための「提供の仕方」としての視点として、次のようなものがあります。

・業務の卓越性:優れた業務プロセス(製造の品質管理・生産管理、効率的な資材調達など)によって、一定品質の商品を最良の価格で提供する。

・製品の優位性:優れた企画力・開発力によって、常に他社にはない画期的な商品を企画・生産・提供する。

・顧客との関係性:個々の顧客のニーズにきめ細かく対応し、最高の顧客サービスを提供する。

自社は、どの「提供の仕方」で他社と勝負するのかの方針(方向性)を決めておいて、次に具体的にどのような提供をしていくかを考えていきます。

 

事業ドメインを設定する必要性

事業ドメインを設定することにより「自社のすすめべき方向、実施すべき事項」が明確になり、それにより、人やお金などの資源を有効に投入することができます。

また、「事業ドメインから外れる事業(やってはいけないこと)」も明確になり、「無謀な多角化」を防ぐことができます。

技術やノウハウ、人財などの経営資源がないにもかかわらず、異業種に展開した場合、これまでの多くは失敗しています。

また、逆に、「事業ドメインを狭く設定」してしまうと、技術革新や市場の変化などの環境の変化で、事業が行き詰まることもあります。

たとえば、販売チャネルを既存の小売チャネルだけにこだわってしまい、経営環境変化の中でインターネット通販が台頭してきても対応できず、売上がじり貧になった例もあります。

皆さんは何回もお聞きになっていると思います、事業ドメイン設定に関して有名な「鉄道会社」の話があります。

アメリカのある鉄道輸送会社は、自社の事業ドメイン「鉄道事業」と「手段(どのように提供するか)」で定義してしまったために、トラック会社や航空会社との競争に負けてしまったといわれています。

もし、鉄道事業ではなく「運輸事業」という「機能(自社が提供する価値)」で設定していたら、トラックや飛行機のような代替手段が現れたら、むしろ事業ドメインに当てはまる新しい事業分野ととらえて、積極的にそちらにシフトしていたかもしれません。

このように「事業ドメイン」を決めるにあたっては、将来の事業の展開が広がるような事業ドメインの設定を行う必要があります。

 

事業ドメイン設定のためのコア・コンピタンスの確認

「コア・コンピタンス」とは、「顧客に対して価値を提供する際、他社に真似できない当社ならではの中核的な力」をいいます。

「自社内部で磨き上げられた独自の技術・スキル・サービスの蓄積をベースに、他社には提供できない卓越した顧客価値を創出できる能力」です。

長期的に経営を継続し、成長していくためには、自社の「コア・コンピタンス」が何かを再認識しておく必要があります。

「コア・コンピタンス経営」ということが言われていますが、これは、事業の「選択と集中」を通じて、自社ならではの「強み」に特化することにより、自社の競争優位性を築く経営スタイルです。

自社の「コア・コンピタンス(本当の強み)」は次の特徴を持ちます。

① 顧客が認知する優れた価値を顧客に与えている

② 多くの事業に広く応用可能であること

③ 他社が簡単に模倣できない性質のものであること

私が25年間勤めていた「大日本印刷」は、「長年蓄積した高度な印刷技術」を「コア・コンピタンス」として保有しており、これを核として様々な事業展開を行っています(最近は「情報」も加わっています)。

この「コア・コンピタンス」は、市場環境の変化とともに陳腐化する可能性もありますので、継続的に見直しを行って、新たな能力の育成が必要になります。

「コア・コンピタンス」は認識するだけでなく、「育てていく」という気持ちが必要です。

この「コア・コンピタンス」は、ブランド力、技術開発力、物流ネットワーク、生産システムなど様々なものがあります。

 

事業ドメインの例

書籍やセミナー聴講から入手した各社の事業ドメインについて紹介します。

なお、その後、変更している可能性もありますので、あくまでも参考情報として下さい。

① ダスキン:単なる「掃除用具レンタル業」ではなく、「世の中をきれいにする事業」

これにより、「ハウスクリーニングや夜間の店舗クリーニングなどに掃除のプロを派遣する事業」「空気清浄器や浄水器の販売、レンタル」に幅を広げることができる。

② ビール会社:「ビールの製造・販売」ではなく、「ビールを飲むことによって得られる、開放感、コミュニケーション、雰囲気づくり、ストレス解消などを定義する事業ドメイン」を設定している。

例えば、サントリーは「生活文化産業」。これにより、ビール園の経営や他の飲料の供給などに幅を広げることができる。

③ オリエンタルランド:「心の活力創造業」

④ 明治生命:「総合生活・金融関連サービス業」

⑤ IBM:「問題解決サービス業」

⑥ ツムラ:「漢方を原点とした総合健康医療業」

⑦ 電通:「トータルコミュニケーションサービス業」

⑧ 大日本印刷:「拡印刷」⇒「情報コミュニケーション産業」⇒「P&I(印刷と情報)ソリューション」

⑨ NEC:「C&C(コンピューター&コミュニケーション)」⇒「インターネット・ソリューション・プロバイダ」

 

福岡県の老舗出版社「梓書院のドメイン改革による売上拡大」:セミナー聴講から紹介

先に「新着情報」でセミナーの聴講報告として紹介しましたが、私にとってインパクトが大きかったので再度紹介します。

「梓書院」は、1972年に創業された、現在、九州で存在する「出版社」では最も長く事業を行っている会社です(43年)。

現在の「出版不況」の中で、「梓書院」は、ここ7~8年で、売上を倍増しています。

そお最大の要因は、「事業ドメイン」を変えた(変革)です。

事業の領域(事業ドメイン)を従来の「出版屋」から「ものがたり屋」に変えたことにより、実施する事業内容を広げることができたとのことです。

「出版屋」とした場合の事業展開としては、「自費出版」「企画出版」「校正代行」「編集代行」「スキャニング代行」などになります。

これを「ものがたり屋」に変革すると、「出版」は事業展開の一部になり、新たに「電子ブック・Web」「デザイン・イラスト」「マンガ」「ブランド化」「コンサルティング」などと拡張できたとのことです。

これにより「宗像市の沖ノ鳥島の世界遺産」の広報や「大野城市のキャラクター(大野ジョー)」の誕生に中心的な役割を果たすことができています。

従来の事業ドメインの「出版屋」からでは、取り組めない分野でしたが、事業ドメインを変えることにより、素直に事業に取り入れることができるようになります。

「梓書院」の場合、他からノウハウを受けたり、大きな投資をすることなく、売上を伸ばしています。

事業ドメインを変えることにより、事業展開の幅を広げて、既存のお客様に新しい提案をできるようになり、これにより売上を増やしています。

ただし、これができたのは、創業以来43年間蓄積された、他社に真似ができない「ものがたりを具現化する力(ものがたり力)」(コア・コンピタンス)を保有していたからだと思います。

「事業ドメイン」を決める際は、先に示したように、各会社が持っている「コアコンピタンス(核となる力)」が重要になります。

 

会社の中には、自社の「事業ドメイン」を明確に決めてないところもあるかもしれません。

今一度、自社の保有するもの(コア・コンピタンス)を見直して、市場の動向も加味して、「事業ドメイン」の設定を行うことは、事業の拡大に有効と思います。

北九州アシスト法務事務所は、主に、中小企業支援を業務とする行政書士事務所です。

「32年間の製造会社勤務の経験」と「行政書士のスキル」で中小企業様の事業の発展にお役に立つことを願っています。

机上の「経営理論」だけでなく、「現場で共に考えていくこと」を行動指針としていますが、実施するには「裏付けとなる論理的な考え」はやはり必要です。

先に紹介しました「梓書院」のお話を聞かせて頂き、「理論をいかに実施するか」ということを再認識させて頂きました。

今後は、支援させて頂く会社だけでなく、多くの会社の経営者のお話をお聞かせ頂いて、より有効で細やかなご支援ができるようにしていきたいと思っています。

次号では、これまでの「現状の正しい認識」と「事業ドメインの設定」を基にした「事業戦略」について紹介します。

 

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