経営戦略(2)現状の正しい認識①「3C分析」「SWOT分析」
*2015年10月の投稿記事を2020年に一部修正しています。
前号の記事から「経営戦略」について紹介しています。
今回は「経営戦略」の2回目として、「現状の正しい認識」について、その手法を中心に紹介します。
「経営戦略」を立案する上で、現在の「自社の状況」及び「市場や競合の状況」を正しく認識することが重要です。
今号では、「3C分析」と「SWOT分析」を紹介し、次号で「5フォース分析」について紹介します。
3C分析
「3C分析」とは、「自社:Company」「競合:Competitor」「顧客・市場:Customer」の3つの視点に注目した分析です。
この3つの現状を分析して、その後、「5年後の状況」を予測することが必要です。
一昔前は、この中の「競合」についての動向を注視していれば良かったのですが、現在は、「顧客・市場」にまず目を向けることが重要です。
競合ばかりに目を向けていたら、市場(消費者)の動向を見失い、顧客からも見放される可能性が高くなります。
それぞれの分析の視点を紹介します。
「市場・顧客」の分析の視点
① マクロ環境の現状と予測から、自社のターゲットは誰かを明確にする
② 自社の事業ドメイン(事業領域)の市場の現状と変化は何かを明確にする
*事業ドメイン(事業領域)については次々回の投稿で紹介します
③ 市場・ターゲット顧客の変化によって、自社の従来の事業(成功要因)が機能しなくなるリスクはないかを検討する
④ 今後、市場で成功する要因は何かを検討する
「競合」の分析の視点
① 自社にとっての競合を明確にする
*これまで認識していた会社以外に視点によっては違う会社が競合になる可能性もあります
② 具体的な競合企業の動向、戦略は何かを見極める
③ 競合は市場や顧客のニーズの変化にどのように対応しているかを明確にする
「自社」の分析の視点
① 自社の強みは何で、競合会社ができないことをできるかを検討する
② 自社のターゲット製品に対する市場・顧客のニーズを明確にし、どうやって応えられるかを検討する
③ 競合会社が行っていることで参考にできることはないかを検討する
④ 市場・顧客対応及び競合対策として、自社にとって必要な経営資源は何かを検討する
SWOT分析
「SWOT」分析は、「自社が持つ強み(Strengths)」と「自社が持つ弱み(Weaknesses)」及び外部環境である市場・顧客、競合に対して有利な環境である「機会(Opportunities)」と不利な環境である「脅威(Threats)」を分析し、その対応を検討することです。
具体的な作業としては、1枚の紙を上下左右に2分割ずつ4等分して、自社内部の強みと弱み、外部環境(市場・経営環境、顧客、競合)にある機会と脅威を、それぞれ箇条書きにしていきます。
強みと弱みとは
相手に勝つにはまず自分を知らなければなりません。
強みは「自社のコアコンピタンス(核となる力)」となる経営資源です(コアコンピタンスは次々号で紹介)。
ただ漠然と知っているだけでなく、きちんと認識して、次のステップの戦略立案の中で、意識してさらなる強化をする対策を検討できる状態にすべきです。
冷静に整理してみると、他社から見て「思っている以上に強い項目」を見つけ出す可能性があります。
弱みとは、他社に比べて劣っている経営資源です。
事業の成長を阻害している弱みは自社で克服することも必要ですが、状況によっては「アウトソーシング」、「他社からの取り込み」あるいは「回避する」などを実施することも効果があります。
機会と脅威とは
機会とは、外部環境の中で自社にとってチャンスになることである。
他社がすでに実行したことを後追いするのではなく、外部環境の変化を一早く察して、創業者利益(一番乗りをした会社が占有する利益)を掴むようにしたい。
脅威とは、自社にとって注意しなければならない環境変化です。
競合他社の動向や、環境問題(環境規制)のような社会問題から検討します。
SWOT分析の事例(2000年頃のビール会社の事例)
<自社の強み>
・トップブランド力
・中高年層の顧客に強い
・全国の酒店の強力な販売網
・原材料の調達力(特にホップ)
<自社の弱み>
・自動化の遅れた工場生産ライン
・生産コストが他社より高い
・若年層の顧客が少ない
・量販店、コンビニのルートが弱い
<外部環境の機会>
・規制緩和(発泡酒の低税率)
・若年層のビール愛好家が増加
・量販店で手軽に購入できる
・アルミ缶の定着(コンパクト化)
<外部環境の脅威>
・海外産ビールの輸入拡大
・酒店ルートのシェアの落ち込み
・量販店、コンビニのルート拡大
・量販店からの値引き要請
・アルミ缶の回収問題
SWOT分析からの戦略検討
上記のあるビール会社のSWOT分析を見ると、ある程度の「対策の方向性」が浮かび上がってくると思います。
SWOT分析からの「戦略立案」については、次々号で紹介します。
今号では、「経営戦略立案」の第一段階である「現状の正しい認識」として、その分析手法である「3C分析(市場・顧客、競合、自社)」「SWOT分析(自社の強みと弱み、外部環境の機会・脅威)」について紹介しました。
次号では「現状の正しい認識」の続きとして、「5フォース分析」について紹介します。
先の「問題解決のステップ」でも「(課題の)正しい現状分析」が重要と紹介しましたが、同じように、効果がある「経営戦略」を立案するためには、自社と外部環境の正しい認識を持つことが重要です。
これにより、その後のステップの「自社の事業ドメインの決定」「戦略の立案」がより有効になります。
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