中小企業ほど深刻!半導体・電子部品不足
材料、部品の確保をどうするか?需給を読んで在庫を管理するのは難しい。
半導体、電子部品などが不足になって、身動きが取れなくなって先行きが不透明な中小企業が増えています。
当社の身近での困りごとの話
電子機器製造の中小企業の経営者の話
6月30日~7月2日に、北九州市の「西日本総合展示場」で開催の展示会で、親交のある電子機器製造メーカーの社長さんと会って立ち話。かなり深刻な状況です。
私:「最近の会社の状況はどうですか?」
A社長:「注文はいくらでもあるのですが、モノが作れないのです。」
私:「どうしてですか?」
A社長:「部品が全然入らなくて、依頼しても半年、1年後の納入という回答しかなくて」
私:「ICなどの半導体が入らなくなっているという話は聞きますが・・・」
A社長:「半導体だけでなく、抵抗やコンデンサー、コネクター(接続端子)など、ほとんどの部品が手に入らない状態です」
私:「他の企業も同様ですか?」
A社長:「北九州市の大手企業でも調達は難しく、部品が確保できているのは日本では、精密機器製造メーカーの●●だけのようです。ここはいち早く在庫を積んで1年以上は大丈夫とのことです」
私:「かなり大変な状況ですね。従業員の方は?」
A社長:「休業補償や他社への応援でしのいでいます。いつまでこれが続くのか・・・」
補助金申請の話
電子機器関係への事業進出のために「補助金申請」を手伝っているメーカーの話。
私:「事業化を考えた場合、この部分は小型化して実証確認を行ったらどうですか?」
B社長:「やりたいのですが、半導体が手に入らなくて、補助金の実施期間中に試作品が完成できないのでやむなく、手に入る部品で構成するとこの大きさにしかなりません」
私:「それならしょうがないので、小型化の実証確認は1年先にしましょう・・・」
半導体などの電子部品の不足の原因
業界では、この電子部品の不足の原因として、3点を指摘しています。
(1)世界的な半導体需要の増加
・自動車製造の新型コロナウィルスによる生産停止の反動による急回復
・5Gスマートフォン端末の拡大
・巣ごもり需要による家電販売の増加
・テレワークによるパソコンなどの需要増大
(2)半導体関係の工場の火災による停止
・2020年10月の「旭化成エレクトロニクス・延岡工場」の火災
・2021年3月の「ルネサスエレクトロニクス・那珂工場」の火災
(3)アメリカ・テキサスにおける寒波の影響
・寒波により、半導体製造工場や化学プラントが停止
*化学プラントの停止は、コネクターなどの部品にも影響を与えている
大手よりも中小企業への影響が大きい
今回の半導体などの電子部品の不足は、大手のメーカーも大きな影響を受けています。
アメリカのアップル社でも、スマートフォン「iPhone」の生産に支障がでて、4~6月期は「約3,000億円」の売上が喪失し、その後も損失は増えるとのことです。
また、国内でも「エアコン」需要が最盛期にもかかわらず、部品が入手できずに生産を縮小している状況が報道されています。
大手でも部品の調達が難しい状況を受けて、冒頭の電子機器製造会社のように、中小企業では様々な策を実施しても入手できない状況です。
不足はいつまで続くのか?
業界では、正常化まで「1~2年かかる」と推測しています。現在は、増産のための製造装置に使う半導体も不足している状況で、生産を増やそうにも増やせない状況です。
異常事態に対応するには
製造業では「ジャスト・イン・タイム」生産システムなど、在庫を極力持たないことを推進していました。現在は、「事業継続力強化計画」などで、事業の継続に必要な体制を構築することが推奨されています。今回のような電子部品不足の対応としては、3通りの考え方があります。
(1)在庫を持つ
(2)購入ルートを複数確保する
(3)設計段階で、代替品が使用できるように工夫する
どの施策も正常時にはムダになり、コストアップ要因になりますので、判断が難しいところです。
この記事を読まれている方の多くは今回の半導体などの電子部品不足とは関係ないと思いますが、直近では、「鉄鋼材料不足」「住宅用などの木材不足」「一部の食料品不足」など、多くの問題が発生しています。
この時に、いかに、お客様及び自社の損失を最小限に防げるように現状業務の仕組みを見直すことをお勧めします。
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