「経営・業務の改善」(5)5S活動「清掃」「清潔」「しつけ(躾)」
(本記事は2015年9月に投稿したものを2020年7月に一部変更しています)
前回までに「5S活動の効果」と第1ステップ、第2ステップである「整理」「整頓」について紹介しました。
今号では、「整理・整頓」の成果をいかに有効に利用し、これを定着させて、「個人・組織の体力を高め」、これを会社の業績向上に役立てていくかを紹介します。
第3ステップ:「清掃」
「清掃」とは「職場をきれいな状態にして、いつでもすぐに仕事(作業)ができるようにすること」です。
「整理・整頓」で「必要なものを、使いやすい状態」にしたことで、より清掃し易い状態になっていると思います。
工場で機械を扱う場合、「清掃は点検なり」と教えられました。
始業前に、装置を清掃することにより、油漏れやさび、金属粉飛散などを気付くことができ、その装置に大きな故障が発現する前に、装置の機微な故障を見つけることが可能になります。
当然、単に機械的に「清掃」するのではなく、注意深く「清掃」を行う必要があります。
先のブログでも示しましたが「1作業1片付け」で、時間をかけずにこまめに清掃をすることが長続きするこつです。
この「1作業1片付け」は、人によっては、できそうでなかなかできないものです。
例えば、出張に行った後、カバンの中の書類や交換した名刺をすぐに出して処理すること、直後に処理すれば、記憶も薄れてないのでより良い報告書などが書けるのですが、戻ると、他の仕事が気になって、そちらに手を付けるために出張の処理が後回しになってしまいます。
そのため、記憶をたどって、より時間がかかり、また、その報告書などの内容が不十分になってしまいます。
また、出張先で名刺交換をした方にすぐに、メール連絡や電話連絡を入れたらビジネスチャンスが高まるのに、時間が経過したことにより、ビジネスチャンスを失うこともあります。
私は、名刺交換をした方には、メールやフェイスブックで、なるべく直ぐに、ご挨拶を入れることを心がけていますが、これを継続することを定着させるにはかなり労力を要しました。
ほとんどの方は、すぐに、連絡を受けた方が「好印象」を持って頂き、多少、覚えて頂けるようになると思っています。
私のような士業の場合、並列で業務の処理をする場合が多くあります。
その際に、やっている業務の「小片付け」を行って、次に開始したときに、すぐに思い出してスムーズに取り掛かれるようにしておかないと時間の無駄が生じてしまいます。
少し話が脱線しますが、「清掃状態の評価」で実践したことを紹介します。
会社勤務のときに、「クリーンルーム」で仕事をすることが多くありました。
クリーンルームといっても、清掃を継続的に実施しないと「ほこり」が堆積していきます。
その清掃状態を確認する時に、「白いクリーンルーム用の布(ワイパー)」と「強い光の懐中電灯」を用意します。
「白い布」で装置の上や裏側を拭くと「ほこり」の付着状態が良くわかります。
また、部屋の照明を消して、「懐中電灯」で装置の上や、床を照らすと、ほこりが光って、清掃状態が一目で判断することができます。
「清掃」で気をつけたいのは、まとまった時間を設けて実施するのではなく、こまめに実施することが重要です。
その際に、始業から10分間、あるいは昼休み後に10分間と時間を決めて、一斉に、全員参加で継続すると効果がでます。
たまにスーパーで「○○時になりました」「従業員の皆さんは一斉に身の周りの点検、清掃を実施して下さい」とアナウンスを聞くことがあります。
この時に、従業員がきちんと実施していれば好印象を持ちますが、実施しないと逆に悪い印象を与えますので注意が必要です。
また、担当エリアを決めて、役割と責任を明確にして、清掃状態をチェックする仕組みを構築し、習慣化できればより効果がでます。
「清掃」は継続が大事で、先の「整理」「整頓」を活かす上でも、粘り強く定着させたいものです。
第4ステップ:「清潔」
「清潔」とは、「整理、整頓、清掃(3S)を維持すること」です。
きれいな職場であると、汚すのが申し訳ない気持ちになり、きれいな状態を維持しようとする意識が働きます。
いかに少しの労力で「3Sを維持できる」かは、各自の少しの「意識」、「行動」によって決まります。
「意識」の三原則
① 見せる
他の人に、「見られている」という消極的な意識よりも「見られたいように見せる」という積極的な意識を持つと維持が継続します。
② 汚さない
各自が汚さないように気をつけて振る舞うだけで汚れは減っていきます。
③ 広げない
あらかじめ段取りを考えていれば、机の上や作業場にむやみやたらとものを広げる必要はないはずです。
「行動」の三原則
① 整える
書類や工具の置き方で見た目の印象が良くなります。
同じものを乱雑に置くよりも、角を揃えるとか、一列に同じ方向で並べるとかの少しの配慮で見た目がよくなります。
② もとに戻す(・・・ぱなしの防止)
使ったらその都度元に戻すことを意識して実行しましょう。
「出しっぱなし」「点けっぱなし」「使いっぱなし」になりがちですが、前に示したように「1作業1片付け」を実施しましょう。
③ 汚れはその都度取る
汚れは時間が経つと、除去し難いものがあります。特にテープや接着剤は固まってしまった後は、特殊な薬剤が必要になることもあります。
だいたいの汚れは、すぐに拭き取るなどの処理を行えば除去できます。
従業員の中に、作業服が汚れていることを自慢する人がいます。本人は「油が付着」「インクが付着」した作業服を「自分は仕事をしているんだ」と誇示していると思いますが、これは考えものです。
この場合、汚れる部分に適切な保護具(エプロン、腕カバーなど)を付けて、作業服を汚さないことが必要です。
また、身体に有害な物質に触れる場合は、マスクや手袋などの保護具を用いることは当たり前のことです。
汚れた作業服で職場から出て、例えば食堂に行った場合、他の人に迷惑をかけることになります。
3S(整理・整頓・清掃)が少し乱れた段階で、修正できるようにする環境が重要になります。
乱れがわかるように、設備の塗装色を明るい色にしたり、玄関マットも汚れがわかるようなものにするとか工夫が必要です。
その中で、担当者だけでなく管理者あるいは他のメンバーが気付いて、良い意味で指摘し合える環境をつくることが重要です。
この「清潔」段階では、これまでの「3S(整理・整頓・清掃)」各ステージで、各メンバー間で「対話」を通じた信頼感ができてますので、指摘されても素直に対応できるものと思います。
第5ステップ:「しつけ(躾)」
「しつけ(躾)」とは、「決められたルールをきっちり守るよう習慣化すること」です。
「4S(整理・整頓・清掃・清潔)」を継続することができると、決められたことを守る習慣が組織に根付きます。
これを継続させるには、先にも述べましたが、「経営者の5S活動継続の意思」が必要です。
社長や経営者、管理職が「5S活動に関心」を持ち続ければ、しつけは自然とできますが、熱意がなくなると元の状態に戻ってしまいます。
「しつけ」が定着すると「当たり前のことを当たり前にできる会社」になり、会社の基礎体力は強くなります。
ただし、トップ層からの「掛け声」だけでは定着は難しく、それを維持する「5S推進委員会」のような組織をつくり、役割を明確にして、日々活動を継続するしくみが必要になります。
ここで気をつけなければいけないのは、あくまでも「5S活動」の主体は「全員」であり、「5S推進委員会」だけが行うのではないことです。
このため、「5S推進委員会」のメンバーは、半年や1年で交代し、多くのメンバーに経験してもらうことも有効です。
これまで、「5S活動」について、「活動の効果」と各ステップ「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(躾)」の内容について紹介しました。
次回は「5S活動のまとめ」として、「なぜ5S活動がうまくいかないのか」をテーマに紹介したいと思います。
(株)事業パートナー九州は、中小企業の経営改善を支援します。
32年間の製造メーカーで経験した事、学んだ事をベースに、中小企業様のお役に立てることを願っています。
「5S活動の教育」を系統的に行います。ご興味がある方はご連絡下さい。
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