「GDP:22兆円、雇用:650万人」消失 ~ 事業承継待ったなし ~
事業承継の問題をこのまま放置すると、2025年頃までの10年間の累計で、22兆円の国内総生産(GDP)と約650万人の雇用が失われるという記事が、2017年11月14日の日刊工業新聞に掲載されていました。
「事業承継」の現状と今後の対応について紹介します。
現状を認識しましょう
社長の高齢化
現在、社長さんの平均年齢は「60歳を超えて」、今後10年間で70歳を超える社長さんは約245万人で、この内半分の127万人が後継者が決まっていません。
企業の業績が良くても後継者がいないので、廃業しなくてはならない企業が続出します。
当然、廃業により従業員の雇用が消失、場合によっては、中小企業の技術力で成り立っていた精密部品が入手できなくて、大企業の生産や開発がストップする可能性もあります。
廃業が開業(創業)を上回る
廃業者数よりも開業者数が上回れば、当然企業数は増えます。
しかし、政府や地方自治体、商工会議所や銀行などが「創業セミナー」を盛んに実施していますが、現状は廃業が多い状況です。
「中小企業白書の2017年版」に記載の2009年から2014年の企業数(会社数+個人事業者数)の変化では、
廃業企業:113万者 ー 創業企業:66万者 = 39万者の減少、
ちなみに存続企業は、304万者で、創業企業と併せて存在企業は「382万者」です。
廃業の中には、経営状況が良い企業もあり、これを引き継ぐことができれば、先に示した損失を減らすことができます。
なぜ、承継が進まないのか?
最大の原因は、今の社長さんにあります。
多くの人は、元気なうちは「承継問題」を先送りします。
頭の片隅で気にはなっているのですが、現在の仕事で忙しくて考える余裕がなく、そして銀行や主要な取引先から「社長、事業承継はどうするのですか?」と言われ、慌てるケースが大半だと思います。
そういう場合の多くは手遅れ状態になっていると思います。
「60歳になったら事業承継に着手しましょう!」とのキャッチフレーズを目にします。
間違ってはいないと思いますが、もう少し、あと5年ほど早い方が良いと思います。
「事業承継」の要は「後継者」
中小企業、特に小規模事業者の場合、社長が承継を意識した時に、後継者がいることはめったにありません。
人が育つのは時間がかかります。
早くても5年、場合によっては10年かかります。
後継者のためにも、早めに指定して、伴走しながら育てていく必要があります。
では後継者をどうするか?
早めに10年先を考えて「事業承継」を進めることです。
最初は後継者を幅広く考えることです。
① 子供を中心とした親族内で考える
② 従業員や関係取引先など親族外から考える
③ 「会社売却(株式売却)」「事業譲渡」も選択肢に入れる:M&A
現在は、子供がいない、あるいはいても跡を継がない(別の職業を選択)ケースが多く、②、③が選択されるケースが多くなっています。
なかには、「自分の代限り」と思っている経営者の方もいらっしゃると思います。
もう一度考えてみませんか、多くの方々と苦労して築いた会社、後世に残したいと思いませんか?
円滑な承継を妨げる「税金の壁」
国は、日本経済、特に中小企業にとって、「事業承継」が将来の重要な課題と認識しています。
そのため、特に直近は、「事業承継」について、様々な施策を打ち出しています。
その中で「事業承継税制」として対策を実施していますが、諸外国の税金の制度に比べると不十分です。
諸外国の制度は「納税免除」が多いですが、日本の場合は「納税猶予」で、状況によっては軽減されないことになります。
国の税収が不足しているのは理解できますが、この廃業が益々増える「国難」においては、思い切った対策を打ち、企業が存続して利益を上げて法人税を増やす方向を示すべきと思います。
今後更なる減税に変えていかざるを得ないと思います。
事業承継の相談は「信頼」ある機関に:官より民?
事業承継は誰に相談しますか?
商工会議所?、銀行?、税理士?、コンサルタント?など各機関が相談を受け付けています。
公の機関では、無料の場合が多く情報を入手する面では良いと思いますが、最後まで責任を持ってくれるかはわかりません。
お金を出してでも、状況を的確に把握して、総合的な視点で方針・方策を考え、最後まで伴走してくれる機関(この場合は民間が多い)に相談することをお勧めします。
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