セグメント別の業績分析・管理で利益向上を
各企業で毎年あるいは四半期(3ケ月)、月単位で業績を集計して、経営の状況を把握していると思います。
現在、幾つかの企業様の「経営改善」の支援を行っていますが、企業様によっては、社長をはじめとした経営者が現在の状況を正確に把握できていないことがあります。
現状把握は過去3ケ年の決算書(損益計算書、貸借対照表)から、大まかな問題点を把握していきます。
・今期は売り上げが上がったのに何で利益が下がったのだろう?
・利益が出ているのに手元のお金(現金)がこんなに少ないのだろう?
と感じている社長さんも多いかと思います。
この問題を解決する有力な管理手法が、セグメント別の業績分析・管理で、特に、今後の改善策を考えるにあたっては有効な進め方です。
セグメント別の分析の必要性
大企業であれば、管理体制ができているので、各事業部や部単位で業績に関するデータが一定期間に集計されて、その分析がなされています。
中小企業では、業績の集計を「税理士事務所」に丸投げで、月毎の集計(試算表)がかなり遅れて企業側に届き、その結果が悪くても既に手を打てない状況になっている場合もあります。
企業によっては、毎年1回の決算の時しか状況が把握できていないところもあるかもしれません。
中小企業といっても、単一商品、単一の納入先、単一の仕入先で成り立っているところはないと思います。
様々な複数の要素によって成り立っていると思います。
人は体調が悪い、身体がだるい等の自覚症状が出た際にお医者さんに行って様々な検査をするかと思います。
企業も同様で、業績がおかしいと思ったら、系統的に調べる必要があります。
この際の「系統的」がセグメント別の分析です。
セグメント別分析は、細かく分けて見ることによって、全体では「もやもや」していたものを、すっきりと「見える化」することができます。
「セグメント別」とは、単なる「○○部」「△△支店」という部門だけでなく、商品別、顧客別、外注先別、工場の場合のライン別など、様々な視点があり、各企業の実状に合った分け方が必要です。
<建設業の例>
複数の営業所を持つ「塗装業」の場合の視点について示します。
① 営業所(地域別):場所によって競合の有無によってだいぶ差があると思います
② 顧客別:直接営業、ハウスメーカーからの下請け、ネットからの集客、民間or官庁からの依頼
③ 物件の対象別:戸建ての外壁塗装、マンション・商業施設等のビル塗装
④ 外注先別:自社だけでなく協力してくれる外注先にお願いしている場合が多いと思います
これらの視点で、売上、利益、さらに深く「一人当たりの利益(労働生産性)」を分析していくと課題が明確になります。
利益が少ない、あるいは赤字のところを徹底的に原因を追究して、改善策を検討することが必要です。
場合によっては、採算が悪いところは撤退することも必要になります。
当然、これらの集計を行うには、個別の工事毎に受注額、材料費、外注費等を把握しておく必要があります。
セグメント別業績分析の効果
現状がよくわかる
先に示したように、セグメント別に分析することにより、現状が浮かび上がってきます。
部門別では、どの部門が稼ぎ頭か、またどの部門が足を引っ張っているのか?
小売店の商品別では、どの商品が売れているのか、どの商品が売れないのか?
飲食店のメニュー別では、どのメニューのオーダーが多いのか、どのメニューが人気がないのか?
製造ラインでは、どの製品が歩留まりが良いのか、どの製品が生産性が良いのか?、各工程毎の歩留まり、生産性は?
現状がわかれば、次のステップの改善(戦略立案)にスムーズに移行することができます。
今後の戦略が浮かぶ
セグメント分析で現状を把握することができれば、改善点が見えてきます。
なぜ、その部門の利益が高いのか、あるいは低いのか、その原因を明確にすることにより、改善点や次なる戦略は浮かび上がってきます。
その改善点や戦略を、計画(何を、誰が、いつまでに、どのように)に落とし込んで、これの推進状況を定期的に確認し、更なる改善策を取ることにより業績の向上が見込まれます。
セグメント分析で、視点が明確なので管理もしやすくなります。
ある程度細かい(狭い)範囲で管理するので状況が把握しやすくなり、異変をすばやくキャッチすることができます。
これにより、月毎の業績の集計も早くなり、税理士任せで実績の把握が遅くなることもなくなります。
社員のやる気が出る
細かく分けて見ることは、分析で見える化するだけでなく、業績管理の面でも有効です。
現場、特に幹部は漠然と業務を遂行していたのが、現状とその原因がわかると、主体的にやる気を持って仕事に打ち込むことができます。
幹部だけでなく、個々の販売員や工場の作業員も身近な状況がわかると行動が容易になり、また、各関係者で改善策の検討会や業務に関連した勉強会を行うことにより、自分の存在意識を感じることができ、職場の活性化につながります。
「経営は科学」です。
細かく分析することにより、いろいろなことが見えてきます。
「どんぶり勘定」の経営から脱却して、管理された経営に移行しましょう。
ただし、的外れな「セグメント分析」は、解を導くことができなくて、逆に経営者や社員にストレスが溜まっていきます。
当事務所では、財務諸表(損益計算書、貸借対照表)の分析からスタートし、現場の観察、世の中の動向も加味して、最適なセグメント分析の支援をさせて頂きます。
必ず業績向上のカギはあります。
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