日本の国際競争力の低下~立ち直りの道は?~
2020年2月20日に、九州工業大学技術交流会主催、西日本シティ銀行共催の「事業開発ビジネス講座」を聴講しました。
「デジタル時代の経営戦略~モノづくり企業の次の一歩~」
講師:三谷 慶一郎 様
(株)NTTデータ経営研究所 デジタルビジネスデザインセンター長
冒頭に示されたのが「日本の国際競争力」でした。示された資料「三菱総合研究所レポート」を調べてみました。
日本の国際競争力のデータ
総合順位では、バブル崩壊の前(1993年)は世界でトップでしたが、バブル崩壊、その後の低成長(デフレ)時代でどんどん順位を下げて2019年は「30位」です。*「失われた30年」とも言われています
国際競争力を算出した項目の分類を示します。
上記の4つの各大分類ごとの順位を示します。
これを見ると日本の順位が特に低い分類は次の2点です。
① 政府の効率性:38位(2019年)*2018年は41位
② ビジネス効率性:46位(2019年) *2018年は36位
ここでは、「ビジネス効率性」に関して小分類の順位を見てみます。
「生産性・効率性」「経営プラクティス」「取り組み・価値観」が順位が低い結果になっていて、「市場環境変化に対する企業の迅速かつ柔軟な対応力に問題がある」との見解です。
<「生産性・効率性」分野の項目・順位>
・実質労働生産性成長率が大きく悪化(29位⇒58位)
・企業の効率性に関する国際的な基準から見た評価(大企業:56位⇒61位、中小企業:49位⇒52位)
<「経営プラクティス」分野の項目・順位>
・企業の市場変化への対応(61位)
・企業の意思決定の迅速性(63位)
・機会と脅威への素早い対応(63位)
<「取り組み・価値観」分野の項目・順位>
・変化に対する柔軟性や適応性(60位)
<人材面・技術面で弱い点> *上記の3分類と関係して
・人材面の弱さ(管理職の国際経験(63位)、有能な管理職の厚み(60位))
・閉鎖性(海外のアイデアを広く受入れる文化の開放性(61位)
・デジタル対応の遅れ(ビッグデータ分析の意志決定への活用(63位)、デジタルトランスフォーメーション(51位)
以上の結果を踏まえて、三菱総合研究所のレポートでは「人的資本を整備したうえで、デジタル化を活用した意志決定や市場対応の迅速さなどの追求は、生産性向上にとっての必要条件である」と指摘しています。
日本が目指す方向性
三菱総合研究所のレポートでは、日本の競争力向上に関して次のように提案しています。
「中長期的に評価の高い科学インフラの強みを生かすため、それを補完する「ビジネス効率性」(生産性・効率性、経営プラクティス、取り組み・価値観)や政府効率性(ビジネス法制、社会的枠組み)の、生産性に関わる項目を幅広く一体的に改善していくことが妥当な方向であろう」
これを実行するために次の施策を挙げています。
1 知識資本を活用できる人的資本の高度化
・産学連携、海外交流の視点を入れた教育の充実
・競争力のある専門人材や管理職、デジタル対応人材の厚みを増す
2 企業での活動の高度化
・デジタル化の利点を生かし効率化や市場分析、市場開拓を進める
・人的資本の高度化による意志決定の迅速化や新市場の創造を達成
3 制度の環境整備 *多様なベンチャー企業が自由に市場に参入できるように
・法人税などの税制の整備
・知的財産保護の整備
中小企業としてどう取り組むか?
中小企業、フリーランス(個人事業者)としては、次の2つの視点があると思います。
1 既存の中小企業のIT導入
中小企業が独自で検討するのは、人的資源、財的資源、時間の面で難しいのが現状です。
それを改善するには、「ITコーディネーター」などの専門家の活用がお勧めです。
「商工会議所」や「中小企業支援センター」などの支援組織では専門家派遣のサービスを実施しているところもありますので、まずは専門家に相談して、各企業で最適な方法を検討して、具体化していくのがよいと思います。また、「IT補助金」の制度を有効に活用して導入費用を減らす方法もあります。
2 ベンチャー企業の育成
日本の国力を上げるには、国や自治体、大学、大企業などの役割が大きいことは確かです。
ただし、特化した分野では、中小のベンチャー企業やフリーランスの方々が秀でた技術を持っている場合があります。最近は、これらの方々を育成しようとする自治体などの動きがあります。
これらの方は、公的な研究機関や大企業のように、経済的な基盤がなく、開発に集中できないのが現状です。自治体の支援はありますが、まだまだ中途半端な支援と感じていますので、連携のシステム、資金調達などのより強固の取組みが望まれます。
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