外国人材の定着(3)外国人社員のキャリア形成と評価制度
~「採用する会社」から「育てる会社」へ~
前回は、「日本語能力より重要なもの」をテーマに、日本語能力だけでは外国人高度人材は定着せず、相談しやすい職場環境や分かりやすい評価制度が重要であることをご紹介しました。
<前回までの記事>
今回は、その評価制度をさらに掘り下げ、「外国人社員のキャリア形成」について考えてみたいと思います。
近年、多くの企業が外国人高度人材を採用していますが、依然として「人手不足を補うための人材」と考えている企業が少なくありません。
しかし、これからの人材不足時代に求められるのは、「採用する会社」ではなく、「育てる会社」です。
外国人社員を長期的な戦力として育成し、企業とともに成長してもらうことが、企業の競争力向上にもつながります。
高度人材は「仕事」だけではなく「将来」を見ている
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で来日する外国人は、大学や大学院などで専門知識を学び、自らのキャリアアップを目的として日本で働くことを選択しています。
そのため、採用時の給与や待遇だけでなく、
・どのような仕事を任せてもらえるのか
・専門性を高めることができるのか
・将来、管理職や責任者になれるのか
・日本で長く働き続けることができるのか
といった「将来像」を重視する傾向があります。
逆に、「毎日同じ仕事の繰り返し」「将来の役割が見えない」「頑張っても評価されない」と感じると、転職を考えるきっかけになってしまいます。
キャリアパスを「見える化」する
中小企業では、「人数が少ないのでキャリアパスを作るのは難しい」と考える経営者もいらっしゃいます。
しかし、大企業のような複雑な制度は必要ありません。
例えば、
・入社1年目:会社や業務を理解し、一人で担当業務を遂行できるようになる
・3年目:後輩指導やプロジェクトのサブリーダーを担当する
・5年目:部門責任者や海外取引の責任者として活躍する
といった大まかな成長イメージを示すだけでも、外国人社員は「この会社で頑張れば成長できる」と感じることができます。
キャリアパスは、会社からの期待を伝えるメッセージでもあるのです。
評価制度は「公平性」が重要
外国人社員からよく聞く不満の一つが、「何を評価されているのか分からない」というものです。
特に中小企業では、
「社長が見ているから大丈夫」
「頑張っていれば評価する」
という運用になっていることがあります。
もちろん、経営者の判断も重要ですが、評価基準が見えなければ、社員は努力の方向性が分かりません。
例えば、
・専門知識や技術力
・仕事の正確さ
・改善提案の件数
・チームワーク
・日本語能力の向上
・顧客対応力
など、評価項目をできるだけ具体的に示すことで、社員は目標を持って仕事に取り組むことができます。
また、日本人社員と外国人社員を同じ基準で評価することも重要です。
「外国人だから」という理由で評価を甘くしたり、逆に厳しくしたりするのではなく、公平で透明性のある評価制度が信頼につながります。
「責任ある仕事」を任せる勇気
外国人社員が退職する理由として、「成長を感じられない」という声があります。
その背景には、「いつまでたっても補助的な仕事しか任されない」という不満がある場合があります。
もちろん、入社直後から重要な仕事を任せることは難しいでしょう。
しかし、能力や実績に応じて、
・取引先との打ち合わせ
・海外との交渉
・後輩の指導
・プロジェクトリーダー
など、少しずつ責任ある仕事を任せることで、本人の成長意欲は大きく高まります。
企業側にとっても、将来の管理職候補を育成することにつながります。
行政書士ができるキャリア支援
行政書士というと、「在留資格の申請を行う専門家」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
しかし、外国人高度人材の活用という視点では、それだけではありません。
例えば、
・在留資格更新時のキャリア形成のアドバイス
・高度専門職制度の活用
・永住申請に向けた準備
・家族滞在の手続き
・外国人社員のライフプランに応じた制度の説明
など、企業と外国人社員の双方をサポートすることができます。
企業がこうした支援体制を整えることで、外国人社員は安心して将来設計を描くことができます。
「育てる会社」が選ばれる時代へ
日本では今後も人材不足が続き、優秀な外国人高度人材の獲得競争はさらに激しくなることが予想されます。
その中で選ばれる企業になるためには、給与や福利厚生だけでは十分ではありません。
「この会社なら成長できる」
「将来も安心して働ける」
そう感じてもらえる環境づくりが重要です。
外国人社員を単なる人手不足対策としてではなく、企業の未来を担う人材として育成することが、企業の持続的な成長にもつながります。
まとめ
外国人高度人材は、仕事だけではなく、自らの将来やキャリアを見据えて会社を選んでいます。
そのため、
・キャリアパスを示すこと
・公平で分かりやすい評価制度を整えること
・責任ある仕事を任せること
・将来設計を支援すること
が、定着率向上の大きなポイントになります。
これからの企業に求められるのは、「外国人を採用する会社」ではなく、「外国人が成長し、活躍し続けられる会社」です。
次回は、「家族帯同が定着率を高める理由」をテーマに、家族滞在や生活支援が外国人高度人材の長期定着にどのような影響を与えるのかについて解説します。
*不在の場合は携帯電話「080-6423-4793」に転送されます。
つながらない場合は、お手数をおかけしますが、留守電に入れて下さい
外国人材の定着・バックナンバー