永住許可の新ガイドライン公表
2027年4月から審査はどう変わるのか?
年収・年金・日本語能力など新たな要件を行政書士が解説
令和8年(2026年)8月4日、法務省(出入国在留管理庁)は、永住許可に関する新たなガイドライン(案)を公表しました。今回の見直しは、これまでの永住許可制度の中でも特に大きな改正といえる内容であり、今後、日本で永住を目指す外国人や、その雇用主に大きな影響を与えることが予想されます。導入はパブリックコメントを経て令和9年(2027年)4月を予定しています。
これまで永住許可は、「素行が善良であること」「安定した生活を営むこと」「日本の利益に合すると認められること」を中心に審査されてきました。しかし、新しいガイドラインでは、これらの要件をより具体的に示し、「将来にわたって日本社会の一員として安定した生活を送ることができるか」という観点が一層重視されることになります。
今回は、新ガイドラインの背景と主な改正点、そして永住申請を予定している方が今後どのような準備をすべきかについて解説します。
なぜ永住許可制度が見直されるのか
近年、日本では人手不足への対応として外国人材の受入れが拡大し、永住者の数も年々増加しています。一方で、政府は「秩序ある共生社会」の実現を掲げ、永住者には長期的に日本社会の一員として生活する責任も求める考えを示しています。
入管庁は見直しの背景として、
- 永住者の増加
- 将来にわたり自立した生活を送れることの確認
- 公的負担の抑制
- 日本社会との円滑な共生
などを挙げています。
つまり、これまで以上に「永住許可はゴールではなく、日本社会の一員として安定して生活できる人に与えられる資格」という考え方が明確になったといえます。
年収要件が具体化される
今回、最も注目されている改正が年収要件です。
従来のガイドラインでは、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」という抽象的な表現でした。
新ガイドラインでは、「日本人世帯の平均を上回る水準の年収を継続して確保していること」という考え方が示されました。
具体的な金額は毎年の統計を参考に判断される見込みですが、これまで以上に収入の安定性が重視されることになります。
会社員だけでなく、「経営・管理」の在留資格を持つ経営者についても、会社の売上だけではなく、本人の役員報酬や所得が十分であるかが重要な審査ポイントになると考えられます。
年金受給見込みも審査対象へ
新ガイドラインでは、将来受給できる年金についても新たな評価項目が設けられました。
厚生年金に30年間加入した場合と同程度の受給水準が一つの目安とされ、将来にわたり生活基盤を維持できるかが確認されます。
これは単に現在の収入だけでなく、
- 厚生年金への加入状況
- 保険料の納付状況
- 将来の生活設計
まで審査対象となることを意味します。
預貯金や金融資産も重要になる
年収や年金だけではなく、
- 預貯金
- 金融資産
- その他の保有資産
についても総合的に評価される方向です。
特に経営者や投資家の場合は、事業収入だけでなく資産状況も説明できるよう準備しておくことが望ましいでしょう。
日本語能力が新たな審査項目に
これまで永住申請では、日本語能力試験(JLPT)などの資格は必須ではありませんでした。
しかし、新ガイドラインでは、日本語能力が審査項目として追加されます。
現時点では具体的なレベルは公表されていませんが、日常生活や行政手続に必要な日本語能力が求められる可能性があります。
日本で長く生活するうえで、日本語能力は就労や地域との交流にも直結します。今後は、早い段階から日本語学習に取り組むことが重要になるでしょう。
子どもの就学状況も確認
義務教育年齢の子どもがいる場合には、適切に学校へ通っているかどうかも確認項目に加えられます。
これは家族全体として日本社会に適応しているかを確認する趣旨と考えられます。
納税・社会保険の重要性はさらに高まる
これまでも、
- 所得税
- 住民税
- 国民健康保険
- 厚生年金
などの納付状況は重要な審査項目でした。
現行ガイドラインでも、納付期限内に適正に履行していない場合は消極的に評価されることが明記されています。
今後は、新たな年収・年金要件と合わせて、公的義務を継続的に適切に履行していることがより重要になるでしょう。
高度専門職・経営者にも影響
高度専門職のポイント制度による永住申請や、「経営・管理」の在留資格を持つ経営者についても、今回の見直しは無関係ではありません。
高度専門職の在留期間特例などは維持される見込みですが、永住許可の一般要件については新ガイドラインに基づく審査が行われる可能性があります。
特に経営者は、
- 適正な役員報酬
- 社会保険加入
- 納税状況
- 年金加入
- 会社経営の安定性
を早い段階から意識した経営が求められるでしょう。
永住申請は「事前準備」がますます重要に
今回のガイドライン改正によって、永住申請はこれまで以上に「申請前の準備」が重要になります。
例えば、
- 年収は十分か
- 年金・健康保険に適切に加入しているか
- 税金の未納や納付遅れはないか
- 日本語能力は十分か
- 子どもの就学状況に問題はないか
- 必要な資料を適切に準備できるか
などを事前に確認しておくことで、不許可のリスクを減らすことができます。
永住申請は専門家への早めの相談を
永住許可は、一度不許可になると、その後の申請にも影響を及ぼす可能性があります。
特に今回のガイドライン改正後は、従来以上に個々の事情を丁寧に整理し、十分な資料を準備したうえで申請することが重要になります。
当事務所では、
- 永住許可申請
- 高度専門職からの永住申請
- 「経営・管理」の経営者の永住申請
- ご家族を含めた永住申請
- 不許可後の再申請
- 申請前の要件診断・事前相談
まで幅広くサポートしております。
新ガイドラインへの対応に不安を感じている方や、今後永住申請を予定されている方は、早めに専門家へご相談されることをお勧めします。
制度改正に適切に対応し、将来を見据えた準備を進めることが、永住許可取得への最も確実な近道となるでしょう。
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