不許可で多い「業務内容」と「在留資格」のミスマッチ
~不許可を防ぐために企業が知っておくべきポイント~
近年、外国人材の雇用を検討する企業が増加しています。しかし、在留資格の取得を目指す過程で最も多く見られるのが、「業務内容」と「在留資格」のミスマッチによる不許可」です。
外国人を採用したいという意欲はあっても、「実際にどんな仕事ならビザが取れるのか」「この職種で就労ビザが出るのか」が明確に理解されていないケースが多く、結果として入管から不許可の判断が下されてしまうのです。
本記事では、企業が誤解しやすい業務内容のポイントや、ミスマッチを防ぐための注意点を解説します。
1. 在留資格の基本的な考え方を理解しよう
日本で外国人が働くには、「在留資格(就労ビザ)」が必要です。
この在留資格は、働く業務内容に応じて細かく区分されており、どんな仕事でも自由に従事できるわけではありません。
たとえば、次のように分類されます。
在留資格 | 想定される業務内容例 |
---|---|
技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、通訳、営業、経理など知識労働 |
特定技能 | 介護、建設、農業、外食など特定16分野 |
経営・管理 | 会社設立後の経営業務全般 |
技能実習 | 製造業、建設業など技能の習得を目的とした現場作業 |
2. よくあるミスマッチの例とその原因
事例(1):販売スタッフとして外国人を雇いたい
多くの企業が誤解するのが、「接客・販売業務」です。
コンビニや飲食店などのホールスタッフは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」では認められません。これは、専門的な知識や技能が必要とされない単純労働に該当すると判断されるためです。
→ 解決策:マーケティング分析、外国語対応による販促企画など、「国際業務」としての付加価値を明確に示すことで可能性が出てきます。
事例(2):外国人を工場で組立・梱包作業に従事させたい
製造業でも、いわゆるライン作業や梱包作業は「技術・人文知識・国際業務」の対象にはなりません。
→ 解決策:「特定技能」や「技能実習」など、現場作業を目的とした在留資格の活用が必要です。
事例(3):外国人を社長秘書にしたい
秘書や庶務などの事務職は、仕事内容が単純業務と見なされることがあります。
単なるスケジュール管理や電話応対では「専門性」があると判断されません。
→ 解決策:通訳や翻訳、海外との契約調整、資料作成などを明確にし、専門的知識を要する業務であることを証明する必要があります。
3. 在留資格の「審査」は、職務内容の記載が鍵になる
入管への申請書には、「外国人が従事する業務内容」を詳細に記載します。
この際、抽象的な表現(例:営業サポート、事務全般)では不許可になる可能性が高く、具体的に「どんな知識を活用して」「何をするのか」を書くことが重要です。
例:
・「日系・海外顧客向けのWebマーケティング戦略立案および運用、SNS広告管理」
・「海外仕入先との契約交渉、英語による契約書レビューおよび発注管理」
このように、大学での専攻やこれまでの職歴と関連性のある職務内容にすることで、許可の可能性が高まります。
4. ミスマッチを防ぐための実務ポイント
・事前に職務内容を整理する
業務の具体的な中身を洗い出し、どの在留資格に該当するかを明確にする。
・外国人の学歴・職歴と業務内容の整合性を確認する
「日本語が話せるから採用」ではなく、学歴や経験とマッチしているかを重視。
・必要に応じて制度を変える選択肢も検討
どうしても現場作業が中心であれば、「特定技能」「技能実習」など、別の制度を活用する。
・専門家への相談を活用する
在留資格の判断は非常に専門的です。申請の前に行政書士などの専門家に相談することで、不許可のリスクを減らすことができます。
ミスマッチを避けて、確実な採用を実現するために
外国人雇用は、企業の成長と人手不足対策の有効な手段ですが、「業務内容」と「在留資格」のミスマッチを起こすと、申請が不許可になり、企業にも本人にも大きな損失となります。
「どのような職務なら就労ビザが取れるのか」「今の採用計画で問題ないか」など、迷われている場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。
当事務所では、多数の在留資格申請支援の実績を活かし、貴社の採用方針に最適な在留資格の提案と、確実な申請手続きをサポートいたします。
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