不法滞在者ゼロプラン
法務省・出入国在留管理庁(入管)から、2025年5月23日に「不法滞在者ゼロプラン」を公表しています。
今回、その内容を紹介します。
プランの概要
目標
2030年末までに日本国内の不法滞在者数を半減させる
(参考)2025年1月1日時点の不法滞在者数
「74,863人」、前年よりも「4,250人」(5.4%)減少
この半減とすると、2030年末:「約37,000人」
プランの意義と影響
・治安と安全の確保:不法滞在者数の削減によって、国民の安心・安全を高める政策的判断
・制度運用の大幅見直し:従来の運用方針(裁判中は送還停止)を変えるなど、実務的にも大きな転換点
・共生と排除の両立への挑戦:外国人の適正受け入れと不法行為への厳正な対処という相反する政策目標の統合で、今後のバランスが注目される
三段階戦略
1 入国管理の強化
2 在留管理・難民審査の厳格化
3 出国・送還の円滑化
各戦略について概要を紹介します。
三段階戦略の内容
第1段階:入国管理の強化
・電子渡航認証制度「JESTA」の早期導入
オンラインでの事前情報提供とスクリーニングにより、望ましくない人物の水際阻止を強化
(参考)電子渡航認証制度「JESTA」
JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)は、日本の新たな電子渡航認証制度で、短期滞在ビザが免除されている国・地域(約71カ国・地域)から訪日する旅行者を対象とします。米国のESTAや韓国のK‑ETA、日本が目指す国際標準の制度です。
★JESTAの目的と導入背景
・不法滞在やテロリスクへの対応:不適切な入国者を出発前にスクリーニングすることにより、国内での不法滞在や安全保障上のリスクを未然に防ぎます。
・観光客の急増による審査負担軽減:2030年に6000万人の訪日客達成を掲げる中で、入国審査の負荷軽減・スムーズ化が急務となっています。
第2段階:在留管理・難民審査の厳格化
・在留資格の更新や難民認定審査を一層厳密に実施。
特に難民申請を複数回行う者に対し、送還停止効の対象から外すなど、運用の見直しが進められている
第3段階:出国・送還の円滑化
・強制送還体制の強化:警察や自治体との連携を深め、聞き取りや立入検査を強化、不法滞在者本人だけでなく関与者への取り締まりも徹底
・裁判中の外国人に対する送還実施:従来の「裁判中は強制送還を控える」運用を変更し、裁判中であっても送還手続きを進める事例が出始めている
社会的懸念と批判
・人権団体や弁護士からの指摘:司法手続き中でも送還が進められる例や、パニック障害を抱える被告の送還計画など、個人の人権や人格権が無視される事例への懸念が強まっている
その他の関連政策・施策
・共生社会に向けた取り組み:2025年5月23日から「共生社会実現に向けた適正な外国人雇用推進月間」が開始され、雇用環境の適正化や地域との交流促進が進められている
・デジタル化推進:電子手続きや情報発信の電子化(メール配信サービスの再開など)により、制度へのアクセス性と透明性を向上中