外国人材の定着(1)外国人材はなぜ辞めるのか? - 北九州アシスト法務事務所

外国人材の定着(1)外国人材はなぜ辞めるのか?

~給与だけでは解決できない離職の本当の理由~

前回技能実習の監理団体である「アシスト国際事業協同組合」のメルマガの記事として、技能実習・特定技能向けに「外国人材が定着する企業の共通点」を紹介しました。

紹介記事はこちら

今回は、技術者、通訳・翻訳担当者、海外営業担当者などの高度人材(在留資格:「技術・人文知識・国際業務(技人国」)の定着について幾つかの視点で考察してみます。

近年、多くの企業が人手不足への対応として外国人材の採用を進めています。

特に、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格で働く外国人材は、製造業の技術者、ITエンジニア、設計者、通訳・翻訳担当者、海外営業担当者、貿易業務担当者など、中小企業にとって重要な戦力となっています。

しかし、その一方で、
「せっかく採用したのに数年で退職してしまった」
「育成した途端に転職してしまった」
「日本語学校や大学を卒業して採用したが定着しなかった」
という相談も少なくありません。

外国人材の採用には、募集費用、在留資格申請費用、教育コストなど多くの時間と費用がかかります。採用後すぐに退職されてしまうと、企業にとって大きな損失となります。

今回は、外国人材、とりわけ「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働く高度人材が、なぜ退職するのかについて考えてみたいと思います。

「給料が安いから辞める」は本当か?

外国人材の退職理由として最初に思い浮かぶのが給与です。

もちろん、極端に給与が低い場合は退職理由になります。

しかし実際には、「給料を上げたのに辞めた」「同業他社と同じ水準だったのに転職した」というケースも少なくありません。

外国人材の相談を受けていると、退職理由は給与だけではなく、むしろ別の要因が大きいことが分かります。

特に高度人材の場合は、

自分の能力が活かせるか
将来のキャリアが描けるか
日本で長く生活できるか

という点を重視する傾向があります。

 

理由(1)仕事内容が聞いていた内容と違う

最も多い退職理由の一つです。

例えば、

「設計業務と聞いていたが、実際は現場作業ばかりだった」

「海外営業と聞いていたが、ほとんど営業活動がない」

「翻訳業務と説明されたが、実際は単純事務だった」

というケースがあります。

外国人材は日本人以上に「専門職」として採用されています。

そのため、自分の専門性が活かせないと感じると、転職を検討しやすくなります。

また、在留資格との関係でも問題になります。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、専門的な業務を行うことが前提です。

実際の業務内容が申請内容と異なる場合、将来の更新や永住申請にも影響する可能性があります。

理由(2)将来が見えない

外国人材は日本人以上に将来を意識しています。

なぜなら、

・母国を離れている
・家族と離れて生活している
・将来的に永住や家族帯同を考えている

という事情があるためです。

例えば、

「今後どのような役職を目指せるのか」

「給与はどのように上がるのか」

「専門技術を習得できるのか」

が見えない会社では、長期勤務への意欲が低下します。

一方で、中小企業でも、「3年後には主任」「5年後には海外事業責任者」などの将来像を示している会社では、定着率が高い傾向があります。

理由(3)日本人社員とのコミュニケーション不足

意外に多いのがこの問題です。

日本語能力試験N2やN1を取得していても、

・職場独特の言い回し
・方言
・業界用語

などを理解するのは簡単ではありません。

また、日本人側も、「日本語が話せるから大丈夫だろう」と思い込んでしまうことがあります。

しかし実際には、

・相談相手がいない
・孤立している
・困っていても言い出せない

という状態になっているケースがあります。

退職時の面談で初めて不満が分かることも珍しくありません。

理由(4)生活面での不安

高度人材の場合でも生活面の問題はあります。

例えば、

・住宅契約
・銀行口座開設
・携帯電話契約
・病院受診
・子どもの教育

などです。

企業側は仕事に目が向きがちですが、外国人本人にとっては生活の安定も非常に重要です。

特に近年は、「家族を呼び寄せたい」「子どもを日本の学校に通わせたい」という相談が増えています。

会社がこうした相談に理解を示している場合、定着率は大きく向上します。

理由(5)永住やキャリアアップを考えている

優秀な外国人材ほど将来を見据えています。

例えば、

・永住権を取得したい
・高度専門職を目指したい
・家族を日本に呼びたい
・日本で起業したい

という希望を持っている方も少なくありません。

そのため、「今の会社でその希望が実現できるか」を常に考えています。

企業がこうした将来設計に無関心である場合、より良い環境を求めて転職する可能性があります。

定着する会社の共通点

では、外国人材が定着する会社にはどのような特徴があるのでしょうか。

共通しているのは、

(1)仕事内容が明確である

(2)将来のキャリアを示している

(3)相談しやすい環境がある

(4)生活面への配慮がある

(5)外国人材を「一時的な労働力」ではなく「将来の幹部候補」として考えている

という点です。

特別な制度や高額な給与が必要というわけではありません。

むしろ、日常的なコミュニケーションや将来への配慮が重要なのです。

まとめ

外国人材が退職する理由は、単純に給与だけではありません。

仕事内容キャリア形成職場環境生活支援将来設計など、さまざまな要因が関係しています。

今後、日本の人手不足はさらに深刻化し、外国人材の獲得競争も激しくなることが予想されます。

これからの企業に求められるのは、「採用すること」ではなく、「定着して活躍してもらうこと」です。

次回は、「日本語能力より重要なもの ~外国人高度人材が定着する職場環境とは~」について解説します。

外国人材に選ばれる会社づくりのポイントを、実際の相談事例も交えながらご紹介します。

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