高度専門職の要件が見直しへ
年収基準引上げと永住申請への影響
2026年8月14日、日本経済新聞は、外国人の在留資格「高度専門職」について、政府が認定基準を見直し、年収に関する基準を引き上げる方向で検討していると報じました。
報道によれば、法務省は2026年度中にも関係省令を改正する方向で、年収基準の引上げだけでなく、ポイント評価項目の見直し・簡素化なども検討されているとされています。
高度専門職は、高い専門性を持つ外国人材を日本に呼び込むために設けられた制度です。
一方、制度の導入から10年以上が経過し、日本国内の賃金や物価も大きく変化しました。現在の基準が「高度人材」と呼ぶにふさわしいものになっているのかという問題も出てきています。
また、高度専門職は、一定のポイントを取得すると永住許可申請までの在留期間が大幅に短縮される制度でもあります。
今回は、高度専門職制度が設けられた経緯、現在の仕組み、今回報道された見直しのポイント、さらに今後の永住許可申請への影響について整理します。
なぜ「高度専門職」という制度がつくられたのか
日本では、少子高齢化・人口減少が進む一方、国際的には優秀な研究者、ITエンジニア、経営者などの高度人材を各国が競って獲得する時代になっています。
こうした状況を背景として、日本でも高度外国人材の受入れを促進するため、2012年5月に「高度人材ポイント制」が導入されました。
制度が想定している高度外国人材とは、単なる労働力ではありません。
日本国内の人材と補完関係にあり、日本の産業にイノベーションをもたらし、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展につながる人材という考え方です。
その後、2014年の入管法改正により、新たな在留資格として「高度専門職」が創設され、2015年から現在の高度専門職制度がスタートしました。
高度専門職1号は、活動内容によって次の3種類に分けられています。
(1)高度専門職1号イ
大学教授、研究者などの「高度学術研究活動」
(2)高度専門職1号ロ
ITエンジニアなど専門的・技術的業務に従事する「高度専門・技術活動」
(3)高度専門職1号ハ
企業経営者などの「高度経営・管理活動」
特に一般企業で働くITエンジニアや技術者などの場合には、「高度専門職1号ロ」が多く利用されています。
現在の高度専門職は「ポイント制」
現在の高度専門職制度では、学歴、職歴、年収、年齢、研究実績などをポイント化し、さらに日本語能力や一定の大学の卒業者などについて特別加算を行います。
原則として、合計「70点以上」になれば高度外国人材として認定されます。
例えば「高度専門職1号ロ」の場合、
- 博士号・修士号などの学歴
- 関連する実務経験年数
- 年収
- 年齢
- 研究実績
- 日本語能力
- 対象となる大学の卒業
- 一定の資格
などを組み合わせてポイントを計算します。
この仕組みの特徴は、「年収○○万円以上でなければ高度専門職になれない」という単純な制度ではなく、複数の能力・実績を総合評価する点にあります。
例えば、若くても修士号を持ち、日本語能力が高く、対象大学を卒業している外国人の場合には、それぞれのポイントを積み上げることで、比較的若い段階でも70点、さらには80点に到達することがあります。
高度専門職になると何が優遇されるのか
高度専門職として認定されると、通常の就労系在留資格にはない様々な優遇措置があります。
高度専門職1号の場合には、在留期間「5年」が付与されるほか、複合的な在留活動、一定の条件を満たした場合の親や家事使用人の帯同、配偶者の就労、入国・在留手続の優先処理などが認められています。
そして、非常に大きなメリットとなっているのが、永住許可申請に必要な在留期間の短縮です。
一般の外国人の場合、永住許可は原則として「引き続き10年以上日本に在留」することが必要です。
これに対して高度外国人材の場合、
70点以上 → 原則3年以上
80点以上 → 原則1年以上
という大幅な期間短縮が認められています。
このため、高度専門職への変更申請を検討する外国人の中には、単に高度専門職そのものを目的とするのではなく、「将来の永住申請」を見据えて80点以上を目指す方も少なくありません。
なぜ今、要件を見直すのか
今回の見直しの背景として考えられるのが、2012年のポイント制導入から10年以上が経過していることです。
この間、日本では物価や最低賃金、一般的な給与水準などが変化しています。
一方、高度専門職1号ロ・ハについては、現在、ポイントが70点以上あったとしても年収300万円未満の場合には高度外国人材として認定されないという最低年収基準が設けられています。
しかし、「高度専門職」という名称のとおり、日本が積極的に受け入れ、様々な在留上の優遇措置を与える高度外国人材として、現在の年収基準が適切なのかという問題があります。
また、年収だけでなく、学歴、職歴、日本語能力、大学ランキング、資格など様々なポイントが積み上げられるため、必ずしも高い年収でなくても70点・80点に到達するケースがあります。
制度の目的が「高度な専門能力を持ち、日本経済や産業の発展に貢献する外国人材の獲得」である以上、その趣旨に沿った評価制度に見直そうという流れと考えられます。
今回報道された「要件見直し」のポイント
2026年8月14日の報道では、主として次のような方向性が示されています。
(1)年収条件の引上げ
現在の賃金・物価水準などを踏まえ、高度人材として認定する際の年収基準を引き上げる方向です。
ただし、「300万円が○○万円になる」といった具体的な金額は、現時点では正式に公表されていません。
(2)年収ポイントの見直し
高度専門職では、年齢と年収を組み合わせてポイントが決まる部分があります。
そのため、最低年収基準だけでなく、年収によるポイント配分そのものが変更されれば、現在と同じ年収でも取得できるポイントが減少する可能性があります。
(3)評価項目の整理・簡素化
現在は基本項目に加え、日本語能力など様々なボーナスポイントがあります。
報道では、評価項目を整理することで制度を分かりやすくするとともに、審査の迅速化を図る方向も示されています。
したがって、今後は「年収基準だけが変わる」と考えるのではなく、高度人材ポイント制度全体の再設計になる可能性があることに注意が必要です。
なお、2026年8月17日現在、法務省・出入国在留管理庁から具体的な改正後のポイント表、年収額、施行日、経過措置などが正式に公表された段階ではありません。
今後の正式発表を確認する必要があります。
すでに高度専門職の人はどうなるのか
ここは、現在高度専門職で在留している方や、これから申請しようとしている方にとって非常に重要な問題です。
例えば、現在のポイント制度では80点ある人が、制度改正後に年収ポイントが減少したり、一部のボーナスポイントが廃止されたりすれば、新基準では80点を下回る可能性があります。
その場合、
「すでに取得した高度専門職はどうなるのか」
「更新時には新しい基準が適用されるのか」
「旧制度で取得した80点は永住申請の際に認められるのか」
といった問題が生じます。
これについては、改正後の経過措置を確認しなければなりません。
したがって、現時点で「今の制度で80点を取っておけば、将来も必ず80点として扱われる」と断定することはできません。
特に注意したい「永住申請」への影響
高度専門職の見直しで最も注目したいのが、永住許可との関係です。
現在の永住許可制度では、80点以上の高度外国人材については、80点以上を維持して1年以上継続して日本に在留するなどの要件を満たせば、永住許可申請の対象となります。
70点以上の場合は3年以上です。
さらに重要なのは、「高度専門職」という在留資格を持っていなくても、例えば「技術・人文知識・国際業務」で在留している人が、永住申請時と1年前の時点で80点以上だったことを立証できれば、高度人材の特例による永住申請が可能な場合があることです。
また、現在の入管の取扱いでは、1年前のポイントについて原則として現在のポイント計算表で計算する一方、1年前当時のポイント計算表等によって当時80点以上だったことを立証できる場合の取扱いも示されています。
この点は、今回の制度改正を考えるうえで非常に重要です。
もっとも、今回の高度専門職制度の改正に伴って、永住申請におけるポイント評価や経過措置がどのように整理されるかは、今後の正式発表を待つ必要があります。
また、80点あれば自動的に永住が許可されるわけではありません。
永住許可では、素行、安定した生計、納税、年金・健康保険などの公的義務の履行状況なども審査されます。
高度専門職への変更を考えている方は早めの確認を
今回の報道を受けて、「制度が変わる前に高度専門職を取得した方がよいのではないか」と考える方もいるでしょう。
確かに、現在の基準で70点・80点以上を確保できる方については、現在のポイントを一度正確に確認しておく意味があります。
ただし、「制度改正前に申請すれば必ず旧基準が適用される」とは、現段階ではいえません。
今後公表される施行日や経過措置を確認することが重要です。
特に80点前後の方については、
・現在のポイントは何点なのか
・どの項目でポイントを取得しているのか
・年齢や年収の変化によってポイントが下がらないか
・1年後の永住申請まで80点を維持できるか
まで確認しておくことをお勧めします。
高度専門職・永住申請のご相談について
行政書士 北九州アシスト法務事務所では、高度専門職1号への在留資格変更や、高度人材ポイントを活用した永住許可申請についてご相談をお受けしています。
高度専門職は、単純にポイント計算表の数字を足せばよいものではありません。
外国での職歴が今回の業務に関連する実務経験として認められるのか、外国の大学が特別加算の対象になるのか、資格が加点対象になるのか、予定年収をどのように証明するのかなど、個別に確認する必要があります。
さらに、80点以上の方については、現在の高度専門職申請だけでなく、「1年後の永住申請」まで視野に入れた在留資格の設計が重要になります。
今回報道された高度専門職制度の見直しについては、今後、法務省・出入国在留管理庁から正式な改正内容が公表されるものと思われます。
当事務所でも今後の動向を確認し、新しい年収基準、ポイント制度、施行時期、経過措置、永住申請への影響などが明らかになりましたら、改めてご紹介したいと思います。
高度専門職への変更や、高度人材ポイントを利用した永住許可申請をご検討の方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
※本記事は2026年8月17日時点の出入国在留管理庁の公表資料及び報道内容をもとに作成しています。高度専門職の要件見直しについては、今後内容が変更・具体化される可能性があります。
*不在の場合は携帯電話「080-6423-4793」に転送されます。
つながらない場合は、お手数をおかけしますが、留守電に入れて下さい
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