「経営・業務の改善(8)」課題解決のステップ【2】
(本記事は2015年10月に投稿したモノを2020年8月に一部変更をしています)
前号で、「経営・業務の改善」として、「課題解決のステップ【1】」として、「現状分析」と「要因分析(原因分析)」について紹介しました。
今号では、その続きとして、「課題解決のステップ」の「対策の検討」「対策の実施」「対策の効果確認」「再発防止(歯止め)」に関して紹介します。
対策を検討するには、その前提の「現状分析」「要因分析」に基づいて行われますが、実際の現場では、どんどん作業が進行していますので、根本的な対策を待っていることはできません。
そのため「出血を止める応急処置」が必要となります。
例えば、「問題が発生した製品の生産を一時中断し他の製品の製造に切り替える」、「暫定の対策を実施し確認を強化して進行させる(これが恒久対策になることもある)」などの対策を行う必要があります。
この応急処置を施した後に、これから示すステップを実施することになります。
「対策の検討」~「再発防止(歯止め)」の流れは、マネジメントサイクルの「PDCA」と同じです。
*Plan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(評価)⇒Action(改善)の流れを繰り返してレベルアップを図るマネジメント手法
対策の検討
要因分析(原因分析)で抽出した主要な要因について対策(案)を検討します。
この際は、関係するメンバーでブレーンストーミング行ってアイデアを多く出して、評価を行って、要因1つに対して「3つの対策」を選定して下さい。
要因を3つ選定した場合は、「9つの対策」が選定されることになります。
対策が1つであるとその対策が的はずれであったり、効果が少なかった場合は時間のロスになりますので、次善や代替の対策を用意しておいた方が良いです。
この選定した対策に関して、時間と担当を決めて、計画に落とし込みます。
この時は、全体の推進責任者を設けて、情報が一か所に集まるようにしておくことが必要です。
計画は、横軸を日程に、縦軸を実施項目として、表にまとめて関係者がいつでもわかるようにして下さい(見える化)。
対策の中には、装置の改造や材料の変更など時間がかかるものがありますので、効果の期待が少なくても短期に実施できるものは着手して下さい。
対策の実施
実施する対策の計画が決まりましたら、決めた担当者を中心に実施していきます。
実施の段階は、定期的に(日々)、進行状況を確認し、推進責任者を中心にして遅れている対策の挽回策を考えて進めていく必要があります。
対策によっては、効果が全くなく、または逆に悪い結果が生じることもあるので、常に実施状況を管理して、変化に対応することが必要です。
対策の効果確認(フィードバック)
対策実施の段階から、管理項目を設定して、その管理項目の数値が、各対策によって、どうなっているかを把握する必要があります。
朝礼などで共通の書式(フォーマット)を使用して、できれば管理項目の数値をグラフ化して、関係者で対策の効果がわかるように、情報を共有化して進めて下さい。
対策は実施するだけでなく、その各対策がどのような効果(影響)を与えたかを把握することが重要です。
「要因(原因)分析」が十分になされていると「実施した対策」の効果が得られないことは少ないですが、場合によっては、実施した対策が予想に反して効果がでない場合もあります。
この際は、先に実施した「要因(原因)分析」あるいは「現状分析」に戻って(フィードバック)、検討をやり直す必要があります。
また、対策の効果確認で新たなことがわかって、追加対策を行う場合もでると思います。
再発防止(歯止め)
実施した対策が効果を出して問題が解決すると一区切りになりますが、ここで手綱を緩めると、また、同じ問題が発生する可能性があります。
一度発生し、対策した問題を二度と発生させないことが「再発防止(歯止め)」になります。
製造現場では、先の「要因(原因)分析」で示した「4M(人、装置、材料、方法)」の観点で、「再発防止策」を検討します。
人の面では、教育を重視し、例えば、作業者が交代した場合にも問題が再発しないようにしなければなりません。
装置の面では、点検個所を明確にしてチェックシートを使って異常が発生しないように、異常を直ぐに発見できる仕組みを作ります。
材料の面では、供給メーカーと共同で管理項目と管理値を設定して、異常なものが供給されないようにします。
方法の面では、「作業標準書(作業マニュアル)」の見直し、改訂をして、作業員が間違えないようにします。
チェックシートは単なる「レ点」を入れるのではなく、主要な管理項目には、「数値」や「写真の画像」を点検の際に入れるような確実な運用が必要です。
単なる「レ点」の場合、チェックする人がよく観察しないことが起きる可能性があります。
また、チェックシートには、重要な項目に絞り、作業員の負荷を低減させる工夫も必要です。
現場が安定して運用できるまでは、経営者、管理職がしつこく確認を入れることが、「習慣化」できる効果的な方法です。
「5S活動」と同様に、「経営者、管理職」の熱意が重要になります。
ただし、管理的になるのではなく、現場のメンバーとよく「対話」し、また、対策の効果が出ていたら「ほめる」ことも忘れないようにしたいものです。
対策の実施で不良等が解消あるいは減少すると、または「別の問題が発生」すると、中途半端に終わってしまうことがあり、せっかく対策したのに再発してしまうことがあります。
また、対策の効果を継続的に監視し、安定したと判断できるようになれば、現場の負荷を少なくすることも考えていく必要があります。
これを怠ると、「無駄な作業」が標準になり、コストの面でも負担が大きくなります。
これまで2回に渡り「経営・業務の改善」として「課題解決のステップ」について、主に製造会社の視点で紹介しました。
「課題解決」の最後は「対策を継続できる習慣化」です。
強い会社(組織)と弱い会社(組織)の違いは「習慣化」の違いで、「良い習慣」が当たり前のようにできる会社(組織)が、「会社(組織)の基礎体力」が強くなって、これが業績の向上に結びつきます。
各会社によって、課題は幾つも発生していると思います。
この中で、いかに速く、確実に、「現状分析」と「要因(原因)分析」ができるかが勝負になります。
課題解決に時間がかかると、その分、損失が発生してしまいます。
課題解決は「系統的に、論理的に」進めないと、「行き当りばったりの対処療法」では、不十分な結果になり、損失が多くなります。
32年間の製造会社勤務の中で、数多くの課題に直面し、解決してきました。
振り返ると、効率的に進められたケースだけでなく、失敗と思われる事例もあります。
これまでの経験を、中小企業様の課題解決のお役に立てることを願っています。
次回からのブログは、「経営戦略」に関して、一連の内容について、何回かに分けて紹介していきます。
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