入管白書(2023-1)~在留外国人数:過去最高~
2023年12月に出入国在留管理庁(入管)から、2023年版「出入国在留管理」(入管白書)が発行されました。
ここでは、現在の外国人の出入国・在留の状況と「外国人との共生」に向けた施策の状況が示されています。今回は、この白書の中から、外国人材の在留状況について紹介します。
以降に、各種の施策や課題について紹介していきます。
在留外国人数の推移
2022年末時点の中長期在留者数は「2,786,233人」、特別永住者数は「288,980人」で、合計の在留外国人数は「3,075,213人」で、日本の総人口(2022年10月1日:124,950,000人)に対して「2.46%」で、人数、割合ともに過去最高になっています。
在留外国人の国別内訳
2022年末時点の上位5ヶ国の推移を示します。
上記のグラフから直近5年間の推移を示します。2022年の3月からコロナ禍の入国制限が緩和、その後の解除により2022年の在留外国人数は増加し、コロナ禍の前よりも増加しています。特に、ベトナムの伸びが大きくなっています。
この数値を各国の割合で示します。中国、韓国は減少していますが、ベトナムは増加しています。
この表に入っていませんが、「技能実習・特定技能」や「留学生」の推移から、インドネシア、ミャンマー、スリランカ、ネパールなどが今後増加してくると思われます。
在留外国人の在留資格別内訳
直近、5年間の在留資格別の在留外国人の人数を示します。
技術的分野の在留資格の状況
人材不足を反映して、高度人材と言われる「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」が増えています。政府も日本の留学生が引き続き日本で働けるように「専門学校卒業生の就労先の制限を緩和」などの施策を行っており、今後も増加が見込めると推察します。
また、日本で会社を設立し、「経営・管理」の在留資格を得る外国人の方も増えています。国も外国人材の起業を推奨していますので、今後も増えると思われます。
介護業の人手不足が深刻な状況にあるため、外国人の方の就業に期待がかかっています。介護業に関しては、「技能実習」「特定技能」で働く方も増えていますが、長く働くには「介護福祉士」の資格を得て「介護の在留資格」を取得する必要があります。この「介護福祉士」の取得は外国人には言葉の面で難しいと言われていますが、ここ数年は倍々で増加しています。
技術的分野の在留資格の推移グラフを次に示します。(ここでは後述の「特定技能」も含めています)
現場作業関係の在留資格の状況
国策で進めている「特定技能」は、制度がスタートした際に設定した人数は、コロナ禍の影響もあり未達成ですが、確実に増加しています。今後、現場作業の外国人材の活用は、この「特定技能」を中心として進められますので、更なる増加が予測されます。
留学生の状況
2022年末の留学生の人数は、前年に比べて「約45%増加」していますが、コロナ禍閒前の2019年末の人数までには回復していません。これは、コロナ禍で受入れができない年があったためで、今後充足していけば、コロナ禍よりも増えると思います。
身分系在留資格の状況
コロナ禍の中でも「永住者」は増え続けています。2022年末は前年よりも32,779人増加し、「863,936人」で全体の「28.1%」を占めています。現時点では、就労系・身分系の両方とも長く日本に住みたい方が多く、今後も永住者は増えていくと予測します。
一方、特別永住者(主に在日の韓国・朝鮮の方)は、年々減少しています。
今後の在留外国人の状況
現在の日本の少子高齢化による人材・人手不足はますます深刻になってきます。そのため、外国人は増え続けることが確実です。
従来は、高度人材(大学等の卒業生)の受入れを推進していましたが、「特定技能」の制度化によって、現場作業員の受入れが可能になりました。それに伴い、「技能実習」制度は目的を変更して大幅な見直しが進められていて、2024年の国会審議で法制化がなされる予定です。
一方、外国人の増加に対して、日本の受入れが体制・設備そして「感情」の面でも整備されていないのが現状です。特に日本語の教育、これから増える外国籍の子どもの教育に関しては、まだまだ不十分な状況です。
2024年は、上記の技能実習制度の変革も含めて、「外国人との共生社会」の実現に向けた大きな変化の年になると思います。
当事務所は、外国人の在留資格の取得に関して、行政書士として、入管への「取次申請」を行っています。その前提となる個々の外国人やその外国人を雇用する企業の方々が、最適な選択をできるように個別相談も対応しています。
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