入管白書(2023-3)不法滞在・偽装滞在者への対策
1月23日の投稿で「入管白書(2023-2)~不法残留・不応就労~」のタイトルで、不法残留・不法就労の現状(人数の推移、国別の状況等)を紹介しました。
今回は、不法滞在・偽装滞在者への対策について「入管白書2023年版」に掲載の内容を紹介します。
不法滞在者対策の実施
1 摘発の強化
出入国在留管理庁(入管)では、不法滞在者が多く存在している大都市圏を抱える地方出入国在留管理官署に摘発業務を専従とする「摘発方面隊」を設置し、警察等の関係機関と連携して、摘発を強化しています。
2 出頭しやすい環境の整備
不法滞在者が自主的な出頭を促進するために次の施策を実施しています。
(1)出国命令制度の導入
*入管法違反者のうち、一定の要件を満たす不法残留者について、身柄を収容しないまま簡易な手続きにより出国させる制度
(2)「在留特別許可に係るガイドライン」の改訂内容(2021年7月改訂)やその運用事例の公表
*改訂内容:出頭申告した場合は在留の許否判定において積極要素として検討する
(3)出頭申告を促進するための広報
偽装滞在者対策の実施
偽装滞在者とは、次に示す者が対象になりますが、表面上は「正規滞在者」であり、実態を正確に把握することが難しい状況です。
(1)偽装結婚、偽装留学、偽装就労など、身分や活動目的を偽り、在留資格を得る者。在留資格の取得申請を行う際に虚偽の申請を行って在留資格を得る。
(2)当初から活動目的を偽っていたわけではないが、有する在留資格とはかけ離れて不法に就労等する者。
実施されている偽装滞在者対策を示します。
1 偽装滞在者等への取締りの実施
(1)情報の収集・分析の強化
・一般の方からの情報の活用
・外国人の所属機関等からの届出情報
・厚生労働省から提供される外国人雇用状況届出情報
・関係機関から共有される情報等
★上記の情報から外国人の在留・就労状況を把握し、偽装滞在者の発見・摘発等を行う。
(2)摘発の強化・法の積極的な適用による対応
付与された在留資格に属さない就労活動を専ら行っていることが判明した場合には、資格外活動違反者として退去強制手続きを執っています。
2 関与するブローカー等への対応
入管では、警察等関係機関と緊密に連携しつつ、「退去強制事由」の規定を適用して、不法滞在や偽装滞在に関与するブローカーを積極的に摘発するほか、不法就労助長事犯に関与する悪質な雇用主に対して厳格に対応することを進めています。
3 在留カード等の偽変造対策
次の偽変造対策を行なっています。
・2020年12月から、スマートフォン等でICチップの内容を読み取り、その情報が偽造・改ざんされたものでないことを確認する機能を提供。
・在留カードの読取アプリケーションを入管のホームページ等で無料配付を実施。
雇用主も罰せられる
不法滞在の外国人を雇ったり、在留資格と異なる業務を実施させたりした場合、外国人だけでなく、雇用主も「不法就労助長罪」等で罰せられる可能性があります。
外国人の雇用は日本人と異なることが多くあり、法律・制度に則って進めることが必要です。
外国人の雇用で困った際は、当事務所にお問い合わせ下さい。
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