技能実習制度から「育成就労制度」へ
~2027年に完全移行へ。企業が今から準備すべきポイントとは~
日本の労働現場を支えてきた外国人技能実習制度が、ついに大きく転換します。政府は2023年、長年課題とされてきた技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する方針を決定しました。
「制度が変わるらしいけど、何がどう変わるのか分からない」「実習生を受け入れているが、今後どうすべきか」といった声が企業や監理団体から多く寄せられています。
本記事では、技能実習制度から育成就労制度への移行の背景とポイント、今後の実務への影響について、行政書士の視点から分かりやすく解説します。
1 技能実習制度の課題とは?
技能実習制度は、「技術移転による国際貢献」を目的として1993年に導入されました。しかし、制度運用の実態は、「安価な労働力の確保」となっており、次のような課題が浮き彫りになっていました。
・賃金不払いや長時間労働などの人権侵害
・実習先からの失踪者の増加
・キャリア形成につながらない単純作業の繰り返し
・職種や転籍の制限が厳しく、労働者の選択肢が狭い
これらの問題を受け、政府は「労働力確保」と「人材育成」を両立させる新制度として、**「育成就労制度」**の導入を決定しました。
2 育成就労制度とは?
新たに創設される育成就労制度は、2027年頃をめどに完全移行する予定です。制度の大きな特徴は、以下の通りです。
● 制度の目的が「労働力確保と人材育成」に明確化
従来の「国際貢献」ではなく、企業側の人材確保という現実を正面から認めた制度設計となります。
● 職種の柔軟化・転職の緩和
一定条件のもと、**職場の転職(転籍)**が可能になります。これにより、実習生の失踪防止や適切な職場選択の自由が確保されます。
● 日本語能力の向上支援
日本語学習の支援が制度として義務化され、育成段階に応じた語学力の取得が重視されます。これにより、特定技能などの上位在留資格への移行が現実的になります。
● 「特定技能」への円滑な移行
育成就労を修了した外国人は、特定技能1号へスムーズに移行する道が用意されます。これにより、最大5年またはそれ以上の長期雇用が可能になります。
3 実務への影響と企業が準備すべきこと
〇 現在の技能実習生はどうなるのか?
制度移行は段階的に行われ、技能実習制度は2027年までに廃止される見込みです。既に受入れ中の技能実習生については、一定の経過措置のもと継続可能とされる見込みですが、早めに新制度への対応方針を検討することが求められます。
〇 新制度で企業に求められる責任
育成就労制度では、受入企業の管理責任がより重くなります。
特に、日本語教育の実施や人権・労務管理、キャリア支援体制の整備が求められます。
企業が自らの力で全てに対応するのは困難な場合も多く、経験ある監理団体や行政書士との連携が重要となります。
〇 特定技能制度との連携を前提に人材育成を考える
育成就労制度は、将来的に「特定技能」への移行を前提としたステップ型制度として設計されています。
そのため、単なる短期雇用ではなく、「数年にわたる長期的人材活用」を前提とした中期的人材戦略の再設計が企業に求められます。
まとめ:変化をチャンスに変えるために
技能実習制度から育成就労制度への転換は、単なる制度名の変更ではありません。
外国人材の位置づけが「安価な労働力」から「戦力となる人材」へと明確に移行する転換点です。
企業にとっては、これまで以上に人材育成・職場環境・法令順守が問われる時代になります。しかし、適切な対応を行うことで、長期的に安定した人材を確保する大きなチャンスにもなります。
当事務所では、育成就労制度の導入支援や、特定技能への移行、監理団体との連携サポートなど、制度の変更を見据えたトータル支援を提供しています。
「今後の制度変更にどう対応すればよいか」「現在の実習体制で問題がないか」など、気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
当事務所では、関連の「アシスト国際事業協同組合」が行っている、「技能実習の監理団体」「特定技能の登録支援」業務を支援しています。現在組合では「育成就労制度」への移行準備を行っています。
現場の作業者不足で困っている企業の方、ぜひ、当事務所にお問い合わせください。現状を把握して、最適な進め方を検討します。