永住者の在留資格が取り消される?
2027年4月から始まる新制度と注意すべきポイント
2026年10月、出入国在留管理庁は「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。
「永住許可を取得したら、もう在留資格について心配する必要はない」
これまで、このように考えていた方も少なくないと思います。
しかし、2024年(令和6年)の入管法改正により、一定の場合には「永住者」の在留資格を取り消すことができる制度が設けられました。
新しい制度は、2027年4月1日から施行・運用されます。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、「税金や年金を一度でも滞納したら永住資格が取り消される」という制度ではないことです。
今回のガイドラインでは、どのような場合が取消事由となるのか、また取消事由に該当した場合に「永住者」の在留資格を取り消すのか、それとも別の在留資格へ変更するのかについて、具体的な考え方が示されています。
今回は、永住者の方にとって特に重要なポイントを解説します。
同時に公表されました「永住許可に関するガイドライン」もご覧ください。
なぜ「永住者」の取消制度が設けられたのか
「永住者」は、就労活動や在留期間について原則として制限のない、非常に安定した在留資格です。
他の多くの在留資格と異なり、在留期間の更新もありません。
そのため、永住許可を受けた後は、在留期間更新の際に生活状況や税金・社会保険料の納付状況などを入管が定期的に審査する機会がありません。
そこで今回の改正では、永住許可後に、入管法上の義務を守らない、故意に税金等を支払わない、一定の犯罪によって拘禁刑に処せられるといった悪質なケースについて、永住資格をそのまま認め続けることが適当なのかを判断する仕組みが設けられました。
一方、国会の附帯決議では、すでに日本に定着している永住者の利益を不当に侵害しないよう、日本への定着性や法令違反の悪質性などの個別事情を厳正に判断し、特に慎重に運用することも求められています。
今回のガイドラインは、その判断基準をできるだけ明確にするために作られたものです。
新たに追加された3つの取消事由
今回の制度で特に重要なのは、次の3つです。
(1) 入管法上の義務を守らない場合
永住者であっても、入管法上の義務を守る必要があります。
例えば、
・在留カードの有効期間の更新をしない
・在留カードを紛失したにもかかわらず再交付申請をしない
・在留カードを携帯しない
・求められても在留カードを提示しない
などが対象となり得ます。
(2)偽造在留カードを使用しようとする行為
(3)不法入国者等の逃走を助けようとする行為
ただし、ガイドラインでは、在留カードの更新をうっかり忘れた、あるいは不注意で一度携帯していなかったというだけで、直ちに永住資格を取り消すことは想定していないと明記されています。
病気や災害など、義務を履行できなかったことに「正当な理由」がある場合も考慮されます。
最も注意したい「故意に公租公課を支払わない」場合
今回の改正で最も関心が高いのが、税金や社会保険料の滞納です。
対象となる「公租公課」には、
・所得税
・住民税
・法人税
・固定資産税
・国民健康保険料
・健康保険料
・国民年金保険料
・厚生年金保険料
などが含まれます。
一方、交通違反の罰金・反則金などは、ここでいう公租公課には含まれません。
そして非常に重要なのが、法律では単に「公租公課を支払わない」としているのではなく、「故意に公租公課の支払をしない」ことを取消事由としている点です。
つまり、支払義務があることを知っているにもかかわらず、あえて支払わない悪質な場合が対象です。
一度の滞納で永住が取り消されるわけではない
取消事由に該当するかどうかについて、一律に「○万円以上」「○回以上」「○か月以上」という基準があるわけではありません。
入管は、
・本人の収入
・資金や財産
・滞納回数
・滞納額
・滞納期間
・その後の支払状況
・なぜ滞納したのか
・滞納後の生活や事業の状況
・本人に支払意思があるか
などを総合的に判断します。
例えば、病気、災害、失業、事業不振、DV被害、ハラスメントを原因とする離職など、やむを得ない事情によって支払えなくなった場合は、「故意に支払わない」場合には該当しないとされています。
また、役所等からの催告に応じて支払意思を示し、分納や納付猶予の手続を行っている場合も、原則としてこれには該当しません。
給与から社会保険料等が控除されていたにもかかわらず、勤務先の会社が支払っていなかった場合も同様です。
大切なのは、「払えない」と「払わない」は違うということです。
どのような滞納が問題になるのか
反対に、ガイドラインでは問題となるケースも具体的に示されています。
例えば、
・長期間滞納し、届出をせず転居して所在不明になっている
・何度も催告や滞納処分を受けても支払う意思を示さない
・分納や猶予を受けながら約束した納付を繰り返し守らない
・財産を隠して滞納処分を免れようとする
・脱税等によって有罪判決を受ける
といった場合です。
また、会社経営者については注意が必要です。
法人に税金や社会保険料の支払義務があり、永住者本人がその法人の経営・意思決定に実質的に関与しているにもかかわらず、支払義務を認識しながら、あえて支払わない場合には対象となる可能性があります。
したがって、永住者で会社を経営している方は、個人の税金だけでなく、会社の税金・社会保険についても適切な管理が必要です。
一定の犯罪で拘禁刑を受けた場合
もう一つの取消事由が、一定の刑罰法令違反によって拘禁刑に処せられた場合です。
対象となるのは、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、傷害、殺人、住居侵入、一定の危険運転致死傷など、法律で定められた一定の罪です。
重要なのは、すべての犯罪や交通違反が直ちにこの取消事由になるわけではないことです。
一方、対象となる犯罪については、拘禁刑の長さを問わず、執行猶予が付いた場合も含まれます。
ガイドラインでは、過去の犯歴などから犯罪傾向が進んでいると認められる場合には、永住資格の取消しが相当となる場合があるとしています。
また、対象となる犯罪で拘禁刑に処せられた場合、初犯であっても、後述する別の在留資格への「職権変更」が想定されています。
取消事由に該当しても、直ちに日本から退去するわけではありません
今回の制度で非常に重要なのが「職権変更」という仕組みです。
取消事由に該当したからといって、「永住取消し=すぐに国外退去」となるわけではありません。
入管は、取消事由に該当することになった経緯、それまでの日本での生活、家族関係、日本への定着性、その後の改善状況、今後の在留意向などを総合的に判断します。
そして、引き続き日本に在留することが適当でない場合を除き、法務大臣が職権によって「永住者」以外の在留資格へ変更します。
ガイドラインでは、多くの場合、「定住者」への変更を想定しているとしています。
さらに、職権変更後に再び永住許可の要件を満たした場合には、改めて永住許可を受けることも可能です。
家族関係や人道上の配慮が必要な場合には、取消しではなく職権変更とする場合もあることが明記されています。
自治体から入管への「通報制度」も設けられます
今回の改正では、国や地方公共団体の職員が、その職務の中で在留資格の取消事由に該当すると思われる外国人を知った場合、入管へ通報できる制度も設けられました。
ただし、この通報は義務ではありません。
また、「自治体から通報された=永住資格が取り消される」ということでもありません。
通報は、あくまで入管が事実関係を調査する「きっかけ」です。
入管は、本人から事情を聞く「意見聴取」などを行い、具体的な事情を確認したうえで、取消事由に該当するか、さらに職権変更とするか、取消しとするかを判断します。
永住者が今から注意しておきたいこと
今回の制度を必要以上に恐れる必要はありません。
多くの永住者の方が通常どおり生活し、税金や社会保険料を適切に支払い、入管法上のルールを守っているのであれば、この制度によって直ちに永住資格を失うものではありません。
一方で、2027年4月の制度開始に向けて、
・在留カードの有効期限を確認する
・住所変更等の必要な届出を確実に行う
・税金を期限どおり納付する
・年金、健康保険料を適切に支払う
・滞納がある場合は放置せず、役所等へ相談する
・分納や猶予を受けた場合は約束を守る
・会社経営者は法人の税金・社会保険も確認する
といった基本的な管理が、これまで以上に重要になります。
特に、経済的な事情によって税金等の支払いが難しくなった場合には、何もせず放置することが最も問題です。
早い段階で自治体、税務署、年金事務所等へ相談し、分納や猶予など適切な手続を取ることが大切です。
「永住許可を取った後」も適切な在留管理が必要な時代へ
2026年10月には、「永住許可に関するガイドライン」も大幅に改定されました。
そして今回、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」も策定されました。
この2つのガイドラインから見えてくるのは、
「永住許可を取得するまで」だけでなく、「永住許可を取得した後」の生活状況も重視する
という今後の外国人在留政策の方向性です。
永住者は、日本で長期間安定して生活できる非常に重要な在留資格です。
だからこそ、永住許可取得後も、日本の法律やルールを守り、税金・社会保険料などの義務を適切に履行していくことが求められます。
永住の在留資格について不安がある方へ
行政書士 北九州アシスト法務事務所では、永住許可申請だけでなく、永住許可取得後の在留資格についてのご相談にも対応しています。
「過去に税金や年金の滞納がある」
「現在、分納しているが問題ないのか」
「会社の税金・社会保険料に未納がある」
「入管法上の届出を忘れていた」
「今回の取消制度が自分に影響するのか確認したい」
このような場合には、まず現在の状況を正確に整理することが重要です。
特に今回の制度では、単に「滞納があるか、ないか」だけではなく、滞納に至った事情、その後の支払状況、本人の支払意思なども含めて判断されます。
不安がある場合には、問題を放置せず、早めに状況を確認することをお勧めします。
*不在の場合は携帯電話「080-6423-4793」に転送されます。
つながらない場合は、お手数をおかけしますが、留守電に入れて下さい